木の香りがうつ病治療を後押し?住友林業らの共同研究が示す新たな可能性
住友林業、BrainEnergy、東京慈恵会医科大学は、うつ病患者の心理療法室における木質内装と木の香りの効果を検証する共同研究を実施しました。この研究では、木質化した環境がうつ病患者の精神・心理療法にどのような影響を与えるかを調査しています。
研究の結果、木の香りがうつ病患者の心理状態に好影響を与えることが明らかになりました。特に、抑うつや不安の強い患者ほど、木の香りを「よい」と感じる傾向が見られました。これは、木の香りが患者に安心感やリラックス効果をもたらし、治療への意欲を高める可能性を示唆しています。
木の心理療法室:効果検証のポイント
今回の研究では、東京慈恵会医科大学附属病院精神神経科に通院中のうつ病患者20名を対象に、木質化した心理療法室と通常の心理療法室の2つの部屋で、認知行動療法を実施しました。
木質化された部屋では、床、壁、机にスギ材を使用し、木の香りを漂わせるように工夫されています。研究チームは、患者の心理状態をハミルトンうつ病評価尺度や近赤外スペクトロスコピー(NIRS)を用いて評価しました。
研究結果:木の香りの効果
研究結果は以下の通りです。
ハミルトンうつ病評価尺度の5項目(抑うつ気分、罪悪感、入眠困難、食思不振、心気症)において、認知行動療法の効果が認められました。
NIRSによる脳活動の測定では、心理療法室の違いによる有意差は認められませんでした。
しかし、患者の「室内の好ましさ」に関するアンケートでは、木の心理療法室の香りの評価が高く、通常の心理療法室よりも有意に好印象でした。
特に、抑うつ・不安の強い患者ほど、木の香りを「よい」と回答する割合が高く、木の香りがこれらの症状の軽減に役立つ可能性が示唆されました。
自然の力で心の健康をサポート
近年、精神疾患は世界的に増加傾向にあり、うつ病は大きな社会問題となっています。抗うつ薬などの薬物療法は有効な手段ですが、軽症うつ病や回復期における心理療法の重要性も認識されています。
今回の研究成果は、木質内装や木の香りが、うつ病の治療導入・継続を促進する効果を持つことを示唆しています。自然の要素を取り入れた空間デザインは、心身の健康に好影響をもたらす可能性があり、今後の精神医療における新たな治療アプローチとして期待されています。
住友林業、BrainEnergy、東京慈恵会医科大学は、この研究成果を活かし、より多くの人々に快適な空間を提供し、心の健康をサポートする取り組みを推進していくとしています。