世界初、14cmのカーボンナノチューブフォレストが誕生
近年、カーボンナノチューブ(CNT)はその優れた物性から様々な技術への応用が期待されており、多くの研究者がその成長に取り組んできました。今回、早稲田大学の杉目恒志次席研究員と静岡大学の井上研究室の共同研究により、従来の2cmという記録を遥かに上回る、14cmのカーボンナノチューブフォレストの成長に成功したという快挙が報告されました。この成果は、CNTの実用化に向けた重要なステップとなります。
CNTの特性と応用可能性
カーボンナノチューブは、軽量でありながら強靭、さらに優れた電気伝導性および熱伝導性を兼ね備えた素材です。これにより、CNTは構造材料やエレクトロニクスデバイス、さらには医療分野など多岐にわたる分野での応用が研究されています。しかし、CNTの長尺化には従来の技術的な制限があり、特に成長中の触媒の構造変化などの問題から、長尺化が難しい課題とされていました。
新たな成長方法の確立
杉目氏らの研究チームは、ガス中に微量の鉄(Fe)とアルミニウム(Al)の成分を添加する新しい成長方法を開発しました。これにより、速度と長寿命の触媒を実現し、14cmのCNTフォレストを26時間で成長させることに成功しました。この技術では、CNTの成長過程で起こる触媒の構造変化を抑制することが重要な要因となっており、特にFeとAlの原料添加が効果的であることが明らかとなりました。
メカニズムの解明と今後の展望
研究者たちは、まだ詳しいメカニズムについては解明の余地があると認めていますが、さらなる実験を通じてCNTの長尺化を促進する新たな手法の開発を目指しています。今回の研究成果は、『Carbon』に発表されており、学術的にもその重要性が認識されています。
サステナブルな未来を目指して
持続可能な社会を実現するためには、枯渇することのない資源である炭素を用いた高機能な素材やデバイスの開発が不可欠です。CNTの効率的な長尺成長が実現すれば、新たな応用分野が開かれ、コスト削減も期待されます。これからの研究により、より高性能なCNTフォレストが誕生し、持続可能な社会への貢献が期待されます。
研究者のコメント
杉目氏は、今回の成果について「新たな視点からの成分添加により、触媒の構造変化を抑えることができた」と述べました。そして、この成功を基にさらなる研究を進め、より長尺のCNT成長を実現したいと意欲を見せています。今後の進展から目が離せません。
参考文献
- - 杉目 恒志, 近年の彼の研究については以下のURLから確認できます:早稲田大学