新たなイチゴの未来「CULTA-T3L」の登場
2023年7月、農業スタートアップ株式会社CULTAは、自社開発したイチゴ新品種「CULTA-T3L」の品種登録出願が農林水産省に公表されたことを発表しました。この新品種は、気候変動に順応する高温環境にも強く、安定した収量と品質を実現できることが特長です。
CULTA-T3Lの特性
1. 高温環境への強さ
「CULTA-T3L」は、極めて高い耐熱性を持ち、春先の暑さに負けることなく生育します。これにより、長期にわたって収穫が可能となり、高収量を見込むことができます。
2. 完熟品質の維持
海外市場への輸出を考慮し、完熟で収穫したイチゴの品質を長時間の輸送にも耐えうるよう維持できるため、完熟のまま届けることができます。
3. 高糖度
一般的なイチゴと比較して約1.3倍の糖度を誇り、平均糖度は約13度前後となっています。この高糖度により、消費者にとって魅力的な商品となることが期待されます。
栽培の主な特長
「CULTA-T3L」は、草勢が旺盛で、低温環境でも良好な苗サイズを確保できるため、栽培効率が非常に優れています。連続性も高く、収穫の途切れがなく、安定した供給が可能です。
過去の取り組み
CULTAは、気候変動に適応した次世代農業の実現を目指して、ゲノム編集や遺伝子組換えを使用しない独自のAI技術を駆使した品種開発プロセスを採用しています。通常は10年かかる新品種開発を、わずか2年で成功させてきました。
これまでに4つの新しいイチゴ品種を市場に投入しており、CULTA-T3Lはその中で初めての品種となります。この特性から、気候変動の影響で農業が厳しい環境に置かれている生産者に強い支援を提供することが期待されています。
期待される展開
すでに、日本全国で60軒以上の農家やJAから「CULTA-T3L」の試験生産の要望が寄せられています。この日本発の新品種は、世界の農業にインパクトを与え続ける可能性があります。
さらに、日本政府も新たに品種のグローバル展開を支援する方針を示しており、CULTAはその流れに沿って「CULTA-T3L」を国内外での品種登録を進めています。
CULTAが自社生産拠点を持つマレーシアでは、日本から輸出した「CULTA-T3L」の種苗を用いて、日本品質に近い高品質のイチゴを生産することにも成功しています。
まとめ
「CULTA-T3L」は、気候変動に直面する農業界の救世主とも言える存在であり、今後は国内外での品種保護と展開を進めていく計画です。このイチゴが日本の農業の新たな旗印となり、世界への展開を目指す中で、国内外の生産者と共に成長していくことでしょう。