近年、医学の領域で画期的な進展が見られていますが、中でも口内がんの新しい治療法が注目を浴びています。上海交通大学薬学院の研究者たちは、口腔扁平上皮癌の治療において、一酸化窒素療法とナノ触媒療法を組み合わせる方法を開発しました。この新たな治療法は、癌細胞を効果的に破壊しつつ、副作用を最小限に抑えることが期待されています。
口腔扁平上皮癌の課題
口腔扁平上皮癌は、悪性で再発しやすい特性を持っています。従来の治療法には、手術や化学療法、放射線療法などがありましたが、これらは発声や摂食に影響を与えるなど、多くの後遺症を残すことが一般的です。こうした副作用を軽減する新しい治療法が求められています。
ナノ触媒の役割
今回の研究で重要な役割を果たすのは、含鉄ナノ粒子です。このナノ粒子は、鉄原子を孤立させる形で設計され、癌細胞内部の過酸化水素と反応します。その結果、有毒なヒドロキシルラジカルが生成され、癌細胞に対する強力な攻撃が可能となります。このメカニズムは、Fenton反応と呼ばれる化学反応に基づいています。
さらに、近赤外レーザー光が照射されることで、一酸化窒素が放出され、ヒドロキシルラジカルの効果を高めます。この過程によって、癌細胞は制御された方法で死滅させられ、その結果、アポトーシスが引き起こされます。研究者たちによると、動物実験では一度の治療で約85.5%の癌細胞の増殖抑制が確認され、大きな効果が見られました。
副作用の少なさ
研究に参加したYuting Xie氏は、「この新しい治療法は、癌細胞をターゲットにしているため、他の組織に対する影響が非常に限定されています。したがって、体に優しく、しかも効果的であることが強調されています」と述べています。
今後の課題
続いて、研究者たちは癌組織のみに近赤外レーザーを照射する方法を模索しています。特に舌の側面や下部につきましては、周囲の健康的な組織に影響が出ないよう慎重なアプローチが求められます。そのため、ナノ触媒を静脈注射で導入する方法も検討されており、レーザーとの相互作用をより制御しやすくすることが期待されています。
さらに、がんの転移や術後の再発を防ぐ方法についても研究が進められています。これらの研究が進むことで、口内がんに対するより効果的で選択的な治療法が確立されることが期待されています。
研究の公表
この研究成果は、2024年7月10日に『Science and Technology of Advanced Materials』に掲載され、多くの医療従事者や研究者の注目を集めています。
この革新的な治療法が口内がん患者に新たな希望をもたらすことを期待しています。