gSAMURAIニワトリが新たな研究リソースに
株式会社セツロテック(本社:徳島県徳島市、代表取締役:竹澤慎一郎)と徳島大学先端酵素学研究所の竹本龍也教授を中心とした研究グループは、新たな遺伝子改変ニワトリ「gSAMURAI」を開発しました。この成果は、今後の精密育種や遺伝子研究において画期的な一歩となります。
gSAMURAIニワトリの特徴
gSAMURAIニワトリには、始原生殖細胞を視覚的に可視化できる機能があり、さらに特定の薬剤を用いることで始原生殖細胞を除去することが可能です。この特性を活用することで、効率的な新品種の開発に寄与することを期待されています。
具体的には、ニワトリの始原生殖細胞(PGC)に特化したCVH遺伝子座に、蛍光レポータージーンであるmCherry及び、細胞障害性物質を生成するニトロ還元酵素遺伝子NTRが挿入されています。これにより、研究者はニワトリPGCの動態を観察しつつ、必要に応じて始原生殖細胞を除去することができるのです。この技術は、遺伝子改変ニワトリの作製をスムーズに行うための代理母系統としても活用され、育種技術の進化を促進します。
バイオリソースとしての寄託
このgSAMURAIニワトリは、名古屋大学大学院生命農学研究科附属鳥類バイオサイエンス研究センター(名大ABRC)に寄託されることとなりました。名大ABRCは、鳥類に特化したバイオリソースの収集と保存を行っている研究センターで、2007年の設立以降、多くのサンプルを研究者に提供してきました。寄託されるリソース名は「gSAMURAI1.1ニワトリ」とし、名大ABRCでリソースの準備が整い次第、提供が始まります。提供の申込手続きについては、ナショナルバイオリソースセンターの公式ウェブサイトで確認できます。
このバイオリソースは、原則として非営利機関による学術研究に限り利用可能ですが、営利目的の研究には事前に寄託者の承諾が必要です。こうした枠組みにより、学術的な成果がより多くの人々に還元されることが期待されています。
セツロテックの取り組み
セツロテックは、2017年に徳島大学の技術をもとに設立されたスタートアップ企業です。代表取締役会長CTOの竹本龍也氏を中心に、遺伝子編集技術や培養細胞などの先進技術を駆使し、「生物の潜在的な力を借りて、地球の課題を解決する産業を創造する」というミッションに取り組んでいます。ゲノム編集に関する技術は、医療分野だけでなく、農業や畜産業にも応用され、高速での品種改良が可能です。これにより、持続可能な社会の実現に向けた大きな貢献が期待されています。
名大ABRCへのgSAMURAIニワトリの寄託は、遺伝子技術の新たな窓を開くものと言え、今後の研究動向にも注目が集まります。研究者たちは、この新しいリソースを活用することで、より進化したニワトリ品種の開発や、精密育種のさらなる発展につなげていくことでしょう。