進化したマルチカラーX線CT技術
東京大学大学院工学系研究科の島添健次准教授、東北大学金属材料研究所の鎌田圭准教授、およびイタリアのブルーノ・ケスラー財団と共同で、新しいマルチカラーX線CT(Computed Tomography)技術を開発しました。これは、微細なX線エネルギー計測技術を用いたもので、今後の医療診断に画期的な変化をもたらすと期待されています。
新たな技術の概要
このプロジェクトでは、シンチレータアレイとシリコンフォトマルチプライヤー(SiPM)アレイを組み合わせることで、250 µmの画素サイズで十分なエネルギー分解能を実現しました。これは従来の手法に比べ、被ばく量の削減や物質の同定能力の向上に寄与することが期待されています。特に、X線CT技術の低被ばく化は、患者の安全性を高める大きな一歩です。
従来技術との差異
これまでのマルチカラーフォトンカウンティングCT技術では、主にCZTやCdTeといった化合物半導体が使用されていました。しかし、これらの材料はエネルギー情報の活用に限界がありました。これに対し、今回開発されたシステムは、GAGG/GFAGシンチレータと高性能なSiPMアレイを組み合わせており、微細ピクセル化することで、より高精度な画像を提供します。
期待される医療への波及効果
この技術は、画像診断の精度を向上させるだけでなく、リチウムイオン電池や食品への異物混入を検出できる非破壊検査装置にも利用される予定です。これにより、医療だけでなく、産業界での応用も広がることが考えられます。開発された技術は、実用的な画素サイズを持ち、間接変換型マルチカラーフォトンカウンティングCTへの利用が可能です。
研究成果の発表
この成果は、2024年11月25日に英国の科学誌「Communications Engineering」のオンライン版に発表されました。論文では、エネルギー分解能や空間分解能について詳細に説明されています。
結論と今後の展望
マルチカラーX線CT技術の確立は、医療現場における診断技術に新たな可能性をもたらします。低被ばく化や物質識別能力の向上は、より安全で高精度な診断を実現する鍵となります。今後も、この技術がさらに発展し、さまざまな分野に貢献することが期待されています。今後の動向から目が離せません。