350年続く今西酒造がロシア進出で新たな挑戦を開始

奈良県桜井市の老舗酒造、今西酒造の挑戦

奈良県桜井市に位置する今西酒造は、創業から354年を数える老舗の日本酒製造業者です。万治3年（1660年）に設立されたこの酒蔵は、近年、地域の魅力を生かしつつ、日本酒「三諸杉」の海外進出を決定しました。特にロシア市場に目を向け、この新たな挑戦は地元住民や連携する農家との協力を得ながら進められています。

酒造りのこだわり

今西酒造は、日本酒の主成分である水と米に特にこだわりを持っています。三輪山の伏流水を使い、当地で伝統的に栽培される酒造好適米「露葉風」を使用することで、風味豊かな日本酒を醸造しています。そのため、酒の特徴は「こく」を大切にした「うまくち」の日本酒であり、濃醇さが多くの日本酒愛飲者に支持されています。

また、今西酒造は酒造業だけでなく、飲食業や宿泊業などの多角化を進め、地域の振興にも寄与しています。特に酒蔵ツーリズムや米作り体験のイベントを通じ、地域との結びつきを強めながら新たな価値を提供しています。

若きリーダーの可能性

この蔵元の14代目当主である今西将之さんは、2011年に父の急逝を受けて代表取締役に就任しました。当初は酒造りの経験がなかったものの、地域とのつながりを大切にしながら、新しい酒造の形を模索している姿は、多くの人々に希望を与えています。彼自身が持つ広範なビジネス経験を生かして、一般企業での経験を酒造業にシフトさせることに成功しました。

海外進出の背景

最近の日本酒の輸出量が飛躍的に増加している中、特にロシア市場にも注目が集まっています。2014年には日本酒の輸出額が105億2400万円を超え、これは10年前の約2.7倍に当たります。日本酒や和食の人気が国際的に広がる中、今西酒造は「キミハツ」プロジェクトに参加することで、ロシア市場への進出を視野に入れています。このプロジェクトは、大塚製薬が運営しており、若手働き手への支援を目的としています。

特に、ロシアでの「J-FEST2014」イベントでは現地の飲食店との商談が行われました。その結果、現地の輸入業者を通じて、日本酒「三諸杉」の販売準備が進められています。これは今西酒造にとって初めての海外進出の機会であり、2025年2月には「三諸杉純米大吟醸」と「三諸杉梅酒梅杉謙信」の販売を開始する予定です。