アルツハイマー病とレビー小体型認知症の複合病態に関する研究
早稲田大学の研究グループが、アルツハイマー病とレビー小体型認知症の複合した病態について、モデルマウスを用いて詳細に調査した研究成果を発表しました。この研究は、二つの疾患間での神経細胞の死がどのように進行するかについて、新たな知見を提供しています。
近年、認知症の原因としてアルツハイマー病やレビー小体型認知症が注目されており、特にレビー小体型認知症は、日本においてアルツハイマー病に次ぐ患者数を誇っています。両疾患共に、異常なタンパク質が神経細胞内に蓄積し、最終的には細胞死を引き起こします。しかし、これまでのところ、これら二つの病態が複合して進行するメカニズムについての十分な理解は得られていませんでした。
研究の背景と目的
研究チームは、アルツハイマー病の代表的な病変であるタウタンパク質とレビー小体型認知症の原因であるα-シヌクレイン(シヌクレイン)をダブルトランスジェニックマウスに過剰発現させ、両者が神経細胞の機能に与える影響を調査しました。これまでに、個別のモデルマウスでの研究は数多く行われてきましたが、二つを組み合わせての研究はこれが初めてです。
研究結果
研究結果として、ダブルトランスジェニックマウスの海馬領域において、リン酸化されたタウタンパク質が増加し、神経炎症や神経細胞数が有意に減少することが確認されました。特に、恐怖条件付け文脈記憶におけるすくみ時間(freezing time)の減少も観察され、認知機能の障害が示唆されました。このことは、アルツハイマー病とレビー小体型認知症が複合的に進行する場合、病態が単独の疾患よりも速く進む可能性があることを示しています。
研究の社会的意義
この研究の成果は、認知症のメカニズム解明に寄与するだけでなく、臨床における治療法の発見にも繋がる可能性があります。認知症は高齢化社会において、ますます深刻な社会問題と化しています。今回の調査結果は、認知症患者が直面する問題についての理解を深める手助けとなることが期待されます。
今後の展望
引き続き、タウタンパク質とシヌクレインの蓄積メカニズムを明らかにすることで、疾患治療へと結びつけていくことが求められています。研究チームは、さらなる研究を通じて、これらの複雑な病態へのアプローチを模索しています。特に、CRMP2のリン酸化を抑制する薬剤の開発を進め、アルツハイマー病とレビー小体型認知症の進行を抑制する可能性を探っています。
この研究は、2025年7月25日に「Molecular Neurobiology」に発表されました。今後も、さらなる研究が行われることで、認知症治療に大きな進展が期待されます。
おわりに
本研究では、研究者がアルツハイマー病とレビー小体型認知症の病態解明に挑む姿勢が感じられます。高齢化が進む現代において、認知症はますます皆の関心を集めている問題です。これからの研究成果に目が離せません。