安価な豆腐が消えゆく時代、倒産急増の裏に潜む課題とは
近年、食卓を支えてきた豆腐の世界に暗い影が差しています。株式会社帝国データバンクが実施した調査によると、豆腐店の倒産や廃業が急増し、2024年の前半には36件に達しました。これは、過去最多に並ぶペースで、さらに問題が深刻化する可能性があります。
豆腐は、卵やもやしとともに「物価の優等生」と呼ばれ、家計において重要な役割を果たしています。しかし、背景には厳しい経営状況があります。豆腐づくりにかかるコストの上昇と、価格転嫁が難しい状況が続いているのです。
最近の調査からのデータによれば、豆腐を生産するための主要な原材料である大豆の価格は安定していますが、他のコスト、特にエネルギーや物流にかかる費用が高止まりしているため、多くの豆腐店が財政的に苦しい立場に置かれています。
また、豆腐は生鮮食品と同様に賞味期限が短く、小売業者からの値下げ圧力が強いため、薄利多売に頼らざるを得ません。このような状況が続く中、一般的なスーパーで安価なプライベートブランド(PB)の豆腐製品や、大手メーカーの大量生産品が台頭し、価格競争が激化しています。これが豆腐店にさらに追い打ちをかけています。
実際、豆腐1丁にかかる大豆原価率は現在、コロナ前を上回る10%台で推移しています。しかし、このコスト上昇を販売価格に反映できる店舗はわずかで、現状では約半数が赤字経営となっています。これは、豆腐店の経営環境を悪化させており、後継者不足という別の課題も併せて影響を及ぼしています。
豆腐は、「安価」であることが消費者にとっての魅力でしたが、適正価格に対する理解が得られなければ、破綻する店舗が今後も増える危険性があります。家庭の食卓に欠かせない豆腐の未来を考えるとき、私たち消費者も何かしらのアクションが求められているのかもしれません。
豆腐店が抱える経営課題は、ただの価格競争にとどまらず、その背景にはさまざまな要因が絡んでいます。消費者が豆腐の価値を再認識し、製品の適正価格に対する理解を深めることで、これらの店舗が再び元気を取り戻せる道を模索する必要があります。
豆腐の未来は、私たちの食卓と密接に結びついており、その行く先を見つめ直すことが、この難局を乗り越えるための第一歩となるでしょう。今後の動向に注目し、私たちがどのように豆腐店を支えていくかを考えてみる良い機会ではないでしょうか。