マイクロRNAを用いた急性腎障害の革新的な診断と治療法
自治医科大学附属さいたま医療センターの研究チームが、マイクロRNA(miR)を利用した急性腎障害(AKI)の早期診断方法と治療・予防方法を発見しました。この新たなアプローチが確立されれば、世界初の画期的な医療手段となる可能性が高いです。この研究は、国際的な医学誌であるTranslational Researchに近々掲載予定です。さらに、既に国際特許が申請され、ベンチャー企業との共同研究も進行中で実用化に向けた動きが活発化しています。
急性腎障害(AKI)とは何か?
急性腎障害は、感染、薬物、外科手術後などにより腎機能が急激に低下する病気であり、毎年約1,300万人が新たに発症し、そのうち170万人が命を落としています。成人の入院患者の中でも約20%の人がAKIを併発していることから、その早期の診断と適切な治療が求められています。AKIは数時間から数日という短期間で腎不全を引き起こし、老廃物の排泄が困難となり、むくみや吐き気を伴います。特に、老廃物や毒素が体内に残るため、時には命に関わることもあり、この疾患への早期アプローチが急務となっています。
マイクロRNA(miR)を利用した診断法
マイクロRNAは、遺伝子によってコードされる短いRNAで、現在2,000種類以上が同定されています。血液中に存在するこれらのmiRの中から、急性腎障害の早期段階で発現が変わる特定のmiRを挙げることで、診断が可能になります。特に、AKI患者の血液中で特異的に発現が低下するmiR-5100の発見に成功したことが、早期診断への道を開くかもしれません。採血による検査のため、尿量が減少した腎障害患者にも対応できるのが特徴です。
miR-5100の治療・予防への期待
miRは、多くのメッセンジャーRNAに結合することで、その翻訳を抑制するメカニズムを持っています。この特性を利用して、miR-5100を合成し、非ウイルスベクターと組み合わせることで、AKIモデルマウスに投与し、その治療および予防効果を明らかにしました。
研究の今後の展望
この研究は、急性腎障害に関する新たな検査法および治療薬の開発において、国際的な注目を集めています。特に、miR-5100の量産が見込まれており、自治医科大学の研究チームは、ベンチャー企業と連携しながら研究開発を進めています。今後は、検査薬や治療薬の実現に向けた開発が期待されます。
さいたま医療センター腎臓内科の取り組み
自治医科大学附属さいたま医療センター腎臓内科では、腎臓疾患に関連するmiRの役割を解明し、その実用化に向けた研究を進めています。また、地域の医療機関との連携を強化し、患者のニーズに応える診療体制を構築しています。
参考文献情報
- - 論文タイトル: MicroRNA expression profiling in acute kidney injury
- - 掲載誌: Translational Research
- - 掲載日: 2021年12月4日
- - 著者: Akinori Aomatsu, Shohei Kaneko, Katsunori Yanai, Hiroki Ishii, Kiyonori Ito, Keiji Hirai, Susumu Ookawara, Yasuma Kobayashi, Masamitsu Sanui, Yoshiyuki Morishita
お問い合わせ先
- - 教授: 森下義幸
- - 所属: 自治医科大学総合医学第1講座(腎臓内科)
- - 住所: 〒330-8503 埼玉県さいたま市大宮区天沼町1-847
- - TEL: 048 (647) 2111
- - e-mail: [email protected]