サプライチェーン全体のカーボンフットプリント可視化に向けた実証実験
日本の三菱電機株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社、韓国のSK Inc. C&Cが共同で、サプライチェーンにおけるカーボンフットプリント(CFP)の可視化を目指す実証実験を開始しました。このプロジェクトは、2025年6月から10月の期間にわたり実施され、企業間で安全に情報を交換できる「データスペース」の技術を活用します。この新たな取り組みは、より持続可能な社会を実現するための重要なステップとなるでしょう。
1. 実施背景
製造業では、生産性や品質を向上させつつ、多様なニーズに応えるために多品種生産が進められています。しかし、これに伴い、環境に与える影響も見逃せない問題となっています。近年、多くの企業がSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指し、自社のGHG排出量を把握し、エネルギー使用の削減に努めるようになっています。特に、サプライチェーン全体の脱炭素化を図る必要性が強まっています。
そのため、各企業が算出したCFPの情報を適切に共有し、全体の可視化を進めることが求められています。ここで注目すべきは、「データ主権」という概念です。企業が自社のデータを管理しながら、安全に取引先との情報共有を行える仕組みが必要です。これを実現するために、新たな分散型データ連携基盤「データスペース」が構築されました。
2. 実証実験の概要
この実証実験の主な目的は、グローバルに分布する製造現場からCFP算出に必要なデータを集め、国際標準に基づいた企業間データ連携を行うことです。具体的には、シーケンサを用いて製造現場でのデータを収集し、その情報からCFPを自動算出する仕組みを確立します。
実証実験の詳細
- - 期間: 2025年6月1日から10月下旬を予定
- - 目的: 製造工程からCFP算出に必要なデータを収集し、装置単位でCFPを算出・可視化
- - 対象: 電気自動車のリチウムイオン電池製造工程
実証実験の流れ
1. 完成車メーカーとそのサプライヤーを想定し、模擬システムを構築
2. リチウムイオン電池のサプライヤーが製造データを収集
3. CFP算出結果を「Catena-X」標準に従って変換し、データを連携
この仕組みを通じて、CCPの可視化を効率的に実現することが目指されています。
3. 各社の役割
- - 三菱電機: 仮想環境の提供とデータ収集を担当
- - NTT Com: データ通信機能の提供
- - SK C&C: CFPの自動算出やモニタリングツールを提供
4. 今後の展開
この実証実験を契機に、自動車産業を中心に製造業全体へのCFP可視化の普及を進めていく予定です。また、導入企業を拡大しながら、品質向上とエネルギー使用の削減を目指し、持続可能な地球環境への貢献を果たすことを計画しています。
5. 企業のコメント
各社は、ESG(環境・社会・ガバナンス)への対応と持続可能な社会の実現に向けた共同の取り組みとして本実証実験の重要性を強調しました。
再生可能エネルギーの導入や、デジタル技術を活用したプロジェクトにより、持続可能な未来の構築に向けた道筋を一緒に模索していくことが期待されています。