微生物が変える天然ガス
2024-12-20 04:02:20

地下微生物が変える天然ガス起源の理解と探査の未来

地下微生物が天然ガスの起源を偽装



最近、国立研究開発法人 産業技術総合研究所とマサチューセッツ工科大学が共同で研究を行い、地下に存在するメタン菌が熱分解起源とされている天然ガスの「指標」を生物由来のものへと上書きする現象を発見しました。この発見は、天然ガスの資源量の推定や探査方法の再考を促し、未発見の鉱床の発見へとつながることが期待されています。

天然ガスの起源とその重要性



天然ガスは石油や石炭と比較してクリーンなエネルギー源として注目され、世界の総エネルギー消費の約24%を占めています。しかし、主成分のメタンは強力な温室効果ガスでもあり、その生成メカニズムや挙動を理解することは、資源量の正確な評価と気候変動問題に対する対応に不可欠です。

従来、メタンがどのように生成されるかを見分けるために「安定同位体シグナル」が利用されてきました。このシグナルは、メタンの炭素や水素の割合に基づいていますが、地下環境で作られる生物起源のメタンを再現することが非常に困難でした。約半世紀にわたってこの問題は解決されずにいましたが、今回の研究により大きな進展がありました。

研究成果とその影響



研究チームは、地下環境を忠実に再現できる高圧培養装置を開発しました。その結果、地下で生成された生物起源メタンの安定同位体シグナルを初めて再現することに成功しました。さらに、熱分解起源のメタンとメタン菌が共存すると、熱分解起源のメタンの安定同位体シグナルがメタン菌によって生物起源のシグナルに書き換えられてしまうことが判明しました。この現象は、熱分解起源の天然ガスが実際には存在するよりも少ないと見積もられる可能性があることを示唆しています。これにより、従来の考え方を根本から見直す必要が生じています。

探査方法の再考



これまでの探査方法では、熱分解起源の天然ガスが見逃されていた可能性があり、今回の発見はその見直しに拍車をかけるものです。例えば、浅い地層に存在する生物由来の天然ガスは、地下深部にあるより大きな鉱床の指標である可能性があります。そのため、地下深くにある熱分解起源のガスの存在を見逃さないための新たなアプローチが求められています。

未来への期待



この研究の成果は、2024年12月19日には米国科学誌「Science」で発表される予定です。今後は、メタン菌の種類による安定同位体シグナルの上書き現象が他の条件でも見られるかを検証し、普遍性を確認することが目指されています。これにより、天然ガス鉱床の探査技術が革新し、これまで無視されていた資源が再評価されることが期待されます。

まとめ



地下微生物は、天然ガスの生成や起源に関する新たな理解を提供し、それに基づく探査方法の再評価を促進します。この研究は、天然ガス資源の評価や気候変動問題への対応に寄与するものであり、エネルギー分野における新たな可能性を示しています。私たちのエネルギー利用の未来を支える重要な知見となることでしょう。


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