旧ソ連と未承認国家の魅力を探る旅
2025年12月16日に辰巳出版から新たに刊行される『旧ソビエト連邦を歩く』は、写真家の星野藍による力作エッセイ集です。本書は、旧ソ連の15カ国と、さらに未承認国家として著名な4地域へと旅をして得られた、貴重な写真と文章をまとめたものです。この作品は、かつての社会主義の民主主義とその後の経済の混乱から得られた多様な視点を読者に提供しています。
社会主義国家の影
旧ソビエト連邦は、1922年に設立され、1991年に崩壊を迎えました。その間に多くの人々が平等と団結の夢を持って生きていましたが、その理想は抑圧と沈黙によって覆われていました。星野藍は、その歴史的な背景を深く掘り下げ、巨大な建築物や廃墟など、かつての栄光と現在の衰退を対比させることでその「名残」を探求しています。
旅の構成と内容
本書は4つの章から構成されており、各章が異なる地域を取り扱っています。第1章では、現代のロシアとウクライナを中心に、ベラルーシやモルドバの沿ドニエストル地域にも焦点を当てています。第2章では中央アジア5カ国、すなわちウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタン、カザフスタン、タジキスタンについて述べています。
第3章のバルト3国では、リトアニア、ラトビア、エストニアの文化と歴史が紹介され、第4章ではコーカサス地域、特にアルメニア、アゼルバイジャン、南オセチア、アブハジアが舞台となっています。特に未承認国家についての記録は、本書の大きな特徴であり、訪れた際の生々しいエピソードが語られています。
未承認国家への挑戦
星野は、ナゴルノ・カラバフ、アブハジア、南オセチア、沿ドニエストルという、いわゆる未承認国家へも足を踏み入れる勇気ある挑戦をしています。これらの地域は通常、訪問することが困難ですが、彼女は現地の文化や生活を深く感じ取り、それを写真とともに記録に残しています。
ノスタルジアの視点
この書籍は、単なる廃墟の写真集ではありません。星野は時代の足跡を辿りながら、その失われた風景の中に隠された歴史や人々の記憶を掘り起こします。この旅の中で出会った風景や人々、その交流を通して、彼女は新たな視点からのノスタルジアを創り上げています。ゲームクリエイターの小島秀夫氏も、「誰も見たことのないノスタルジアがある」と称賛しています。
著者プロフィール
星野藍は福島県出身の写真家兼グラフィックデザイナーで、彼女の作品は廃墟をテーマにしたものが多く、旧共産圏に対する深い興味を持っています。これまでに受賞歴もあり、著作には『幽玄廃墟』や『旧共産遺産』などがあります。彼女の視点を通じて、旧ソ連や未承認国家の風景を感じ取ることができるこの一冊を、ぜひ手に入れてみてください。
この特別なエッセイ集は、旧ソ連の歴史と文化を知る一助となることでしょう。興味深い写真と共に、失われた風景を辿りながら、時間を超えた旅に出かけましょう。