気管支ぜんそくの新規治療法開発へ期待!遺伝子メカニズム解明の成果
千葉大学医学部附属病院の研究チームは、気管支ぜんそくの発症に関わる重要なゲノム領域を特定し、そのメカニズムを解明しました。この発見は、ぜんそくの予防と治療法開発に繋がる可能性を秘めています。
研究の背景:遺伝子とアレルギー疾患
気管支ぜんそくは、世界中で多くの人が苦しむ慢性的な呼吸器疾患です。近年、遺伝子がアレルギー疾患の発症リスクに大きく影響することが明らかになってきました。
遺伝子配列のわずかな違いであるSNPs(単一塩基多型)は、遺伝子の機能に影響を与えることで疾患リスクに関連していると考えられています。多くの研究では、気管支ぜんそくに関わるSNPsが、ヒト第10番染色体の特定の領域に集中していることが報告されてきました。しかし、この領域は遺伝子を持たないため、ぜんそく発症にどのように影響するかは謎でした。
研究成果:G900領域の役割
研究チームは、複数の研究データを統合して分析することで、気管支ぜんそくに関わるSNPsが、10p14と呼ばれる染色体領域の中でも、GATA3転写因子の転写開始点から900kbp下流に位置する領域に集中していることを突き止めました。この領域をG900領域と名付け、その機能を詳しく調べました。
研究の結果、G900領域はGATA3遺伝子周囲のゲノム構造を制御することで、GATA3の発現量を調節していることが明らかになりました。GATA3は、アレルギー反応に重要な役割を果たすTh2細胞の分化に必須の転写因子です。
G900領域が欠損したマウスは、チリダニ誘発性ぜんそくを発症しませんでした。これは、G900領域がGATA3の発現を調節し、Th2細胞の分化を制御することで、ぜんそくの発症に関わっていることを示しています。
今後の展望:新たな治療法開発への期待
今回の研究成果は、気管支ぜんそく発症の遺伝的メカニズムを解明する重要な一歩です。G900領域を標的にすることで、ぜんそくの予防や新規治療法の開発に繋がることが期待されます。
研究の詳細
本研究は、AMED免疫アレルギー疾患実用化研究事業やJSTムーンショット型研究開発事業などの支援を受けて実施されました。研究成果は、学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences, USA」に掲載されました。