再生医療を支える新たなマイクロキャリアの共同開発が始動
大日本印刷株式会社(DNP)と、再生医療および遺伝子治療に特化した株式会社Hyperion Drug Discovery(HDD)は、2023年3月に可溶性マイクロキャリアを開発しました。この製品は、細胞が接着する足場となる微小粒子であり、すでに製薬メーカーにサンプル提供されています。そして、両社はこの成果を基に、iPS細胞やES細胞の培養を効率化するための共同開発を開始しました。
マイクロキャリアの重要性と背景
近年、再生医療やバイオ医薬品に対する需要が急増しています。特にiPS細胞由来の再生医療製品の開発が進んでおり、細胞培養の効率を向上させるための3次元浮遊培養技術のニーズが高まっています。従来の平面培養と比較して、3次元培養は培養スペースを効率的に利用でき、細胞がより自然な環境で成長することが可能です。
DNPとHDDは、2023年に発表された可溶性マイクロキャリアの特長を活かし、多様な細胞を効率的に培養するための新しいマイクロキャリアの共同開発に着手しました。この新型マイクロキャリアは、希望する細胞に適した接着物質でコーティングされ、iPS細胞やES細胞をより効率的に培養します。
可溶性マイクロキャリアの特長
開発される可溶性マイクロキャリアは、進化した設計により、細胞をそのまま培養器材の上で増殖、分化させることができるため、ワンストップでのプロセスが可能になります。また、通常の不溶性マイクロキャリアと異なり、微小破片が生成されないため、衛生面でも安心です。
DNPとHDDが開発したマイクロキャリアは、細胞を簡単に回収できる特長があります。これは、一般的に再生医療で使用される剥離剤を利用することで、細胞がダメージを受けることなく分離できるため、プロセスの自動化も容易になります。
共同開発の体制
共同開発では、HDDがマイクロキャリアのコーティング設計を担当し、DNPは自社の製造技術を活用して製品化を加速させます。この連携により、両社は再生医療分野における技術的優位性を高め、ユーザーが安心して利用できる製品の提供を目指します。
品質と安全性の確保
DNPとHDDが推進する可溶性マイクロキャリアは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)によって、再生医療製品に適する材料であることが確認されています。これにより、臨床応用を検討する製薬メーカーが安心して活用できるよう、同じく適格性の確認が取得されることが目標です。
大日本印刷株式会社の取り組み
DNPは、印刷と情報技術を融合させた「P&I」の強みを活かし、メディカルヘルスケア分野での新規事業開発に力を入れています。これまでにも、先進的な細胞培養器材の製品化や、温度応答性培養器材の製造を実現しており、その技術力は高く評価されています。
株式会社Hyperion Drug Discoveryについて
Hyderion Drug Discoveryは、2020年に設立された企業で、これまでにない新規機序の再生医療や遺伝子治療技術の開発を推進しています。薬事規制への対応力を強みに、新たな製品や技術プラットフォームを確立し、業界に革新をもたらすことを目指しています。
この新しいマイクロキャリアによって、再生医療はさらなる進展を遂げることが期待されています。この共同開発により、効率的で安全な細胞培養が可能となり、医療現場での実用化にも大きな変化がもたらされるでしょう。