サプライチェーンのCO2排出量問題:スコープ3上流が新たな課題に
2023年、ボストン コンサルティング グループ(BCG)と国際非営利団体CDPが発表したレポート『Scope 3 Upstream: Big Challenges, Simple Remedies』では、企業のサプライチェーンにおけるCO2排出量に関する新しいデータが引き出されました。このレポートは、特にスコープ3上流の排出量が極めて重要なものであることを強調しています。
スコープ3上流の排出量とは何か?
スコープ3排出量は、企業のサプライチェーン全体から発生する間接的なCO2排出を示しています。このスコープ3には、上流と下流の排出が含まれますが、BCGとCDPのレポートでは上流の排出に焦点が当てられています。レポートによると、2023年のスコープ3上流の排出量は、スコープ1(自社の直接排出)とスコープ2(エネルギー使用に伴う排出)の合計の約26倍もあるとされています。
▼ 注目すべき点は↓
- - 26倍という驚異的な数値:スコープ1・2よりも遥かに大きな排出量を示すスコープ3上流は、企業の気候アクション計画において見過ごされがちな要素です。
- - 現在、サプライチェーンの排出量の削減目標を設定している企業はわずか15%に過ぎません。これは、具体的な行動が必要とされる領域であることを示唆しています。
排出量削減のための3つの重要な要因
BCGの研究は、気候変動対応に向けた企業の取り組みにおいて、以下の3つの要因が大きく関わっていると分析しています。:
1.
気候変動対応に責任を持つ取締役会
- 気候変動の監視と実行を取締役会が担当している企業は、1.5℃目標に沿ったスコープ3削減目標を設定している割合が高いとされています。
2.
サプライヤーエンゲージメントプログラム
- サプライヤーとともに気候変動対策に取り組む企業も、スコープ3目標を持つ傾向が強いです。
3.
社内カーボンプライシングの導入
- 企業が意思決定においてカーボンプライシングを導入している場合、その目標達成に向けた計画を持つ可能性が高まります。
これらの要因は、一企業にとどまらず、全体のサプライチェーンにおけるCO2排出量削減にも寄与することが期待されています。
環境的な負債の実情
2023年には、製造、小売、素材部門から公開された上流排出量に基づく炭素負債が3,350億米ドルを超える見込みですが、このリスクは企業や投資家にとって重要な情報でありながら、十分に認識されていない場合があります。
BCGのマネージング・ディレクター、ダイアナ・ディミトロバのコメントには、企業がスコープ3排出量をどう管理するかがリスクマネジメントの観点からも非常に重要であると示されています。取締役会はリスクを定量化し、適切に管理する責任があると強調されています。
まとめ
BCGとCDPの共同レポートは、企業が気候変動に対応するために必要な行動を取るべき理由を明確に示しています。サプライチェーンのCO2排出量、特にスコープ3上流に注目することで、持続可能な未来に向けた道筋を切り開くことができるのです。企業と投資家が共に責任を持つことで、より良い環境を未来に残すことができるでしょう。