デンカアステック、雨水革命
2025-05-29 17:49:30

60年の知見が拓く、都市の「水循環革命」:雨どいの老舗が挑む社会インフラ変革

60年の知見が拓く、都市の「水循環革命」:デンカアステックが挑む新たな挑戦



日本列島が経験する異常気象の頻発は、私たちに水資源の重要性と災害への備えの必要性を改めて突きつけています。降り注ぐ雨水は、時に恵みとなり、時に脅威となる二面性を持つ存在です。これまで「捨てる水」として扱われてきた雨水を、生活に欠かせない「活かす水」へと昇華させる。この壮大な社会変革に挑むのが、60年以上にわたり日本の建築物の屋根から落ちる雨水を効率的に捌き続けてきた雨どいメーカー、デンカアステック株式会社です。同社は長年の経験で培った「雨水の取り回し」に関する専門技術と豊富な知見を基盤に、気候変動時代における水資源の確保と都市型災害への対策を見据え、「雨水社会インフラ革命」という新事業を本格始動させました。

気候変動と災害多発時代に対応する「水」の課題



デンカアステックが直面し、解決を目指す社会課題は多岐にわたります。第一に、地球規模での水不足問題への対応です。雨水を単なる排水としてではなく、貴重な資源として再活用することで、環境負荷を軽減し、持続可能な水利用モデルを構築します。第二に、首都直下型地震や南海トラフ地震といった大規模災害への備えです。災害時にはライフラインが寸断され、水供給が停止するリスクが高まりますが、雨水の活用はこうした非常時における代替水源の確保に貢献します。そして第三に、近年頻発するゲリラ豪雨や集中豪雨による都市部の内水氾濫への対策です。都市のインフラが豪雨に追いつかず、浸水被害が拡大する現状に対し、同社は新たな製品開発を通じて、そのリスク軽減に挑んでいます。

雨水活用の未来を拓く三段階の構想



デンカアステックの雨水インフラ構想は、段階的な発展を見据えています。最初のステップは、一般家庭での雨水活用です。具体的には、トイレの洗浄水や庭木への散水といった用途に雨水を利用するための「雨水タンク」の開発を進めています。家庭用水の使用量において、トイレ洗浄水が大きな割合を占めることを考えると、この分野での雨水活用は節水に大きく貢献します。次のステップでは、雨水の利用範囲をさらに拡大し、洗濯や風呂といった生活用水としての利用を可能にするシステムへと進化させる予定です。そして最終段階では、IoT技術を駆使した高度な雨水管理システムの実現を目指します。リアルタイムの気象データと建物に設置された雨水タンクを連携させ、雨水の貯留量を最適に管理・制御することで、平常時の効率的な活用と、豪雨時の浸水対策を両立させる、未来型の水循環システムを構築します。

「PURE EDEN」が切り拓く、家庭と災害時の新たな水源



現在進行中のプロジェクトの中核を担うのが、雨水利活用タンク「PURE EDEN(ピュアエデン)」です。これは、日本で初めてトイレ洗浄水専用に開発された雨水タンクであり、その独自性が注目されています。平常時には、家庭用水の約21%を占めるとされるトイレの洗浄水として雨水を供給することで、水道代の節約と環境負荷の低減に貢献します。さらに特筆すべきは、災害時におけるその真価です。断水が発生した場合でも、貯留された雨水を利用し、無電力で水洗トイレを確保できるという、非常時に不可欠な機能を提供します。日本の狭小な住宅事情を考慮し、壁面設置型でコンパクトに設計されており、1台で100Lの貯水が可能です。この画期的な製品は、雨水活用の第一人者である福井工業大学の笠井利浩教授との共同開発により実現しました。水循環機能を内蔵しており、タンク内の水質維持にも配慮されています。また、同社は「PURE EDEN」の開発と並行して、業界初、あるいは世界初となる豪雨による内水氾濫時の浸水対策製品の開発も進めており、多角的に水問題の解決に取り組んでいます。

雨水利用の先駆者、笠井利浩教授との協働



デンカアステックの挑戦を支える重要なパートナーが、福井工業大学の笠井利浩教授です。雨水利用研究の第一人者である笠井教授は、「雨を貯めて使うのが普通の社会の実現」をビジョンに掲げ、持続可能な社会の実現に貢献しています。彼の専門分野は雨水利用と環境教育に及び、数々の画期的な研究実績を誇ります。例えば、長崎県五島市の赤島における自立分散型スマート雨水利用システムの開発では、小規模集落の持続可能な水資源確保に成功し、複数のアワードを受賞しています。また、離島での雨水生活体験を通じた環境教育プログラムの推進や、日本初の雨水を原料としたボトル飲料「あまみずドリンク」の開発(国際的な水の品評会で銀賞受賞)など、多方面から雨水活用の可能性を探求しています。さらには、都市建築におけるIoTを活用した分散型雨水活用システムの構想と実証も手掛けるなど、デンカアステックが目指す未来の雨水管理システムと、笠井教授の研究テーマは深く共鳴しています。

雨どいの老舗から「水循環の専門企業」へ



デンカアステック株式会社は、旧東洋化学時代から60年以上にわたり雨どいの開発・製造に携わってきた、まさに「雨どいの老舗」です。国内で唯一、樹脂製と金属製の両方の雨どいを手掛ける技術力は、多様な建築ニーズに応える実績を裏付けています。しかし、同社は既存の成功に安住することなく、長年培った「雨水の取り回し」に関するノウハウを、新たな価値創造へと昇華させています。これまでの「捨てる水」から「活かす水」への視点転換は、単なる製品開発に留まらず、災害時や水不足といった社会課題に対し、雨水を「貯めて使う」「制御して守る」という新たなソリューションを提供することを目指しています。デンカアステックは今、単なる建材メーカーから、雨水を社会インフラ資源として捉え、その価値を最大限に引き出す「水循環の新たな専門企業」として、革新的な挑戦を続けています。


画像1

画像2

画像3

画像4

画像5

画像6

会社情報

会社名
デンカアステック株式会社
住所
東京都港区芝公園2-4-1芝パークビルB館12階
電話番号
03-5473-7770

トピックス(国内(政治・国会・社会・行政))

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。