戦後80年を迎えた被爆者が語った平和へのメッセージ
2024年にノーベル平和賞を受賞予定の日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の箕牧智之氏を招いたイベントが、7月に東京都新宿区で開催されました。このイベントは、生活協同組合パルシステム東京の主催で、多くの参加者がオンラインで繋がり、戦後の平和について考える貴重な機会となりました。
被爆の記憶を共有する重要性
箕牧氏は、広島で被爆した自身の体験を語り、戦争を通じてどれほどの痛みがもたらされたのかを伝えました。1942年、東京で生まれた彼は、戦争の影響で故郷を離れ、広島で被爆を経験しました。彼の家の前を通るボロボロになった人々の姿は、今も忘れられない記憶です。
「空が光った瞬間、何が起こるのか分からない恐怖がありました。そして、その後の混乱の中で家族を探し回る母の姿が目に浮かびます。」と、箕牧氏は初めて目にした被爆の惨状を思い出しました。
核兵器廃絶への取り組み
彼が核兵器廃絶を目指す活動を始めたのは2005年。被団協の元代表委員坪井直氏との出会いをきっかけに、箕牧氏は「核兵器が使われることは許されない」と強く訴え続けています。彼は、アメリカの小学校でも被爆の歴史を伝える証言活動を行い、これが次世代への重要な教訓になると信じています。
「原爆の不条理を伝えることは決して容易ではなく、特に大人たちの多くは今も原爆投下を肯定的に受け止めています。しかし、私たちは平和を築くためにお互いを理解し合う必要があるのです。」と彼は語ります。
教育の力と平和の継承
続いて、平和教育を巡る活動を行う多賀俊介氏も証言しました。彼は高等学校の社会科教師として、生徒たちと共に戦跡を巡り、戦時中の痛みを共に学ぶ機会を提供しています。このことは、歴史を知ることがどれほど重要なことかを再確認させるものでした。
「証言することは命を絞り出しているようなもので、聞く側もその重さを感じる必要があります。私たちは世代を超えて知識を共有し続けなければなりません。」と多賀氏は強調します。平和への道のりがどれほど険しいものであるか、彼の証言からも明確に伝わってきました。
希望のバトンを次世代へ
被爆者の中西巌氏は、次世代に向けて「平和を維持するために行動を起こすことが不可欠だ」と伝えました。今後、被爆者の数が減少していく中で、彼らの体験を語り継ぐことがますます大切になります。
「被爆者が一人もいなくなった時、私たちが再び戦争に巻き込まれないためには、若い世代がしっかりと平和を掲げ続けることが重要です。」と箕牧氏は心からの呼びかけを行いました。
このイベントは、ただの過去の出来事ではなく、私たち一人ひとりが向き合うべき現実を再考する機会となりました。パルシステム東京は、今後も世代を超えたつながりを大切にし、平和を守るための取り組みを続けていく意向を示しています。