オーストラリアでのウニ陸上養殖試験、持続可能な海の再生へ
2025年4月、株式会社北三陸ファクトリーがオーストラリア現地法人KSF Australia Pty Ltdを通じて、ウニ用飼料「はぐくむたね®」を利用した陸上養殖試験をディーキン大学と共同で開始しました。この研究は、ビクトリア州の海洋研究をリードするディーキン海洋研究・イノベーションセンターと連携して行われます。
本研究の目的は、オーストラリア独自の原材料を用いて製造した「はぐくむたね®」を実入りの悪いウニに給餌し、その効果を検証することです。試験は、ポートフィリップ湾沿岸のクイーンズクリフにあるディーキン大学の研究施設で実施され、北海道大学大学院の浦和寛准教授などが開発に関与しています。
残された海洋資源の未来
ビクトリア州ポートフィリップ湾では、最近オーストラリア固有のウニ「purple sea urchin」が個体数を急増させており、その影響で磯焼けが深刻化しています。2020年の調査では、約1億2,500万個体、つまり約9,700トンの生息が確認され、湾内岩礁の60%以上がこの影響を受けているとされています。また、藻場の消失が進むエリアもあり、その対策が急務です。
このような環境問題に直面する中、KSF Australiaはディーキン大学、国際環境NGOのThe Nature Conservancy、オーストラリアの養殖企業Yumbah Aquaculture社とともにコンソーシアムを設立しました。この取り組みは、オーストラリア海洋生態系の再生とウニ資源の高付加価値化を同時に実現することを目指しています。
新しいビジネスモデルの模索
北三陸ファクトリーは「北三陸から、世界の海を豊かにする」というミッションを掲げ、高品質なウニを育てる技術を活かし、持続可能な水産業の未来を作るための取り組みを進めています。2023年にはオーストラリアに法人を設立し、進行中の試験や新たなビジネスモデルを通じて、国内外での展開を視野に入れています。
さらに、北三陸ファクトリーは2024年に中東で行われる食品展示会「Gulfood」への出展が決まり、2025年にはバルセロナ、ボストン、ドバイ、バンコクでの世界的な水産物展示会にも参加する予定です。目指すは、確かなサステナブル・シーフードの販売を通じて、世界に貢献することです。
会社概要
- - 社名: 株式会社北三陸ファクトリー
- - 所在地: 岩手県九戸郡洋野町種市第22地割133番地1
- - 設立: 2018年10月1日
- - 代表者: 下苧坪之典
- - 事業内容: 農林水産加工物の製造販売、技術開発
- - URL: 北三陸ファクトリー
この取り組みが、持続可能な海洋資源の確保や、新たなビジネスモデルの形成につながることを期待しています。