中世ウクライナのキビ
2025-12-15 15:11:31
新しい分析法が明かす中世ウクライナのキビ摂取の秘密
中世ウクライナの食文化を探る新たな発見
近年の研究により、中世ウクライナにおける人々の食生活が新しい視点で明らかになりました。国立文化財機構奈良文化財研究所を含む国際的な研究チームが行ったこの試みでは、古代の人骨から採取した歯石を用いて、キビ消費の痕跡を特定しました。この発見は、ただの食材の検出に留まらず、当時の人々の生活様式や文化を再考するきっかけとなります。
画期的な分析手法の導入
今回用いられた技術は、熱脱着ガスクロマトグラフィー・質量分析法(TD-GC/MS)です。この手法は、特に微量のサンプルからでも正確なデータを取得できる点が特徴です。研究チームは、ウクライナ中部のオストリフ墓地から発掘された人骨から歯石を取り出し、これに対してTD-GC/MSを適用しました。
研究の結果、31の試料から8つの個体において、キビ特有の化学物質「ミリアシン」が検出されました。これは世界的に見ても初めての成果であり、人類の歯石から直接的な食物の摂取を示す証拠を得たといえます。
低摂取の新たな視点
従来の分析法では、食物が個体の食事性タンパク質の約20%以上を占める場合に限り、特定の食品を特定することが可能でした。そのため、シーズンや機会によるキビの摂取が低い場合は、見逃されることが多かったのです。しかし、今回の研究ではこの制約を克服し、わずかなキビの痕跡でも分析できる可能性が示されました。
庄田慎矢博士は、今回の成功を「非常に微細な痕跡でも歯石に残される化学的な指紋を明らかにする新たな方法」であると称賛しています。この新手法によって、過去の微細な食習慣を探る扉が開かれ、古代の人々がどのような食物を摂取していたのかを理解する上での大きな助けとなるでしょう。
古代の生活を映す鏡
研究対象となったオストリフ墓地に埋葬されていた人々は、キーウ・ルーシの文化圏に属し、多様な食文化や習慣を有していました。この地域における食事の多様性は、スラヴ系とバルト系コミュニティからの影響を示しています。興味深いことに、幼少期にはキビをほとんど摂取していなかった個体からもミリアシンが検出されたことは、移動や食料供給の変化から後にキビの摂取が始まった可能性を示唆しています。
この研究結果は、歯石分析を通じて古代の人々の栄養状態や食生活の変遷を理解する上での新しい手法を提供し、過去の食文化を再構築する手助けとなります。
今後の研究への期待
今回の研究は、キビという作物の利用を追跡するうえでの新たな可能性を示しています。これまでの研究では十分に分析されていなかった植物性食品についても、TD-GC/MS法は幅広い適用が見込まれ、古代における食の多様性や人々の文化的背景の解明につながると期待されています。
エビデンスの取得に使用された分析機器は、奈良文化財研究所からの提供を受けています。この技術革新は、今後さまざまな考古学的な文脈での応用が期待され、人類の過去に関する理解を深めるものとなるでしょう。今後の研究結果に注目です。
以上のように、今回の発見は中世ウクライナにおける食生活を深く掘り下げる一助として位置づけられ、さらなる研究が進むことは間違いありません。
会社情報
- 会社名
-
奈良文化財研究所
- 住所
- 電話番号
-