東京農業大学が新たに明らかにした赤色酵母サイトエラ属
東京農業大学総合研究所の研究チームが、赤色酵母サイトエラ属(Saitoella)の全ゲノム情報を解読し、その系統分類学的な位置を明らかにする重要な成果を発表しました。この研究は、サイトエラ属が特異な系統を持つことを示すものであり、最初の株分離から58年目の新綱提唱も含まれています。
研究の背景と重要性
酵母は、非常に多様な種類の微生物であり、特に醸造や製パンに使用されるSaccharomyces cerevisiaeなどは有名です。中でも、サイトエラ属は赤桃色のコロニーを形成し、担子菌門のロドトルラ属に似た形態的特徴を持ちながらも、子嚢菌特有の生化学性状を有しています。従来、サイトエラ属の系統的位置は明確でなく、マーカー遺伝子による推定結果が異なっていたため、研究が進められてきました。
研究の成果
本研究では、東京農業大学を中心としたチームが全ゲノム解読を行いました。Saitoella coloradoensisという酵母の全ゲノムを解読した結果、合計38本の染色体で構成されていることが判明しました。平均長さは約37万塩基対と、既知の菌類の中でも最多の染色体数を持つことが特徴です。
この研究の中で、本命の酵母はタフリナ亜門に属し、全ゲノムの解析からサイトエラ属が他の分類群と異なる系統を持つことが確認されました。また、遺伝子のアミノ酸配列分析からも、厳密に異なる系統を示します。この新しい系統は「サイトエラ綱(Saitoellomycetes)」として提案され、これは日本人の名前を冠した綱であることから、特に注目すべき成果といえます。
ゲノム情報の意義
今回の研究結果は、今後の酵母の産業利用にも大きな影響を与えると考えられています。特に、サイトエラ属はコエンザイムQ10やアミン化合物の生産が期待されており、そのゲノム情報は新しい商業利用につながる可能性を秘めています。
この研究は公益財団法人発酵研究所の支援のもとで進められ、森の微生物学に新たな光をもたらす成果として、高い評価を受けています。今後、さらなる研究が期待される分野です。
まとめ
サイトエラ属の全ゲノム情報の解読と新たな系統分類の提唱は、科学的な進展だけでなく、実用面でも大きな可能性を秘めています。この成果により、赤色酵母に対する理解が深まり、より良い利用方法や応用研究の発展が期待されています。学術界だけでなく、関連業界にも大きな影響を与える今回の発表は、今後の食品科学や生物工学における新たな一歩となることでしょう。