レーザー技術を駆使したリチウムイオン電池火災検知システム
近年、リチウムイオン電池の需要が急速に高まっています。スマートフォンや電気自動車、さらにはデータセンターのバックアップ電源など、広範な分野で利用されていますが、その一方で火災事故が頻発しており、社会問題となっています。特にリチウムイオン電池が集積された環境では、一度の火災が重大な被害につながる可能性があります。これに対し、常時監視し迅速に対応するための新技術が求められています。
1. リチウムイオン電池のリスク
リチウムイオン電池の火災リスクは、保管方法や誤った使用法、さらに製造過程に起因するものです。不適切な扱いが原因で発火することがあり、特に電気自動車やデータセンターでは、多くの電池が同時に集まるため、事態は深刻化します。このような背景から、事前に火災を検知するためのシステムが不可欠となっています。
2. 従来のガスセンサの限界
現在あるリチウムイオン電池監視システムは、火災時に発生する様々なガスをガスセンサで検知しますが、設置場所の制約や風の影響で反応が遅れる可能性があります。また、各電池ごとにセンサを設置する必要があり、コストと手間がかかります。このような課題を解決するために、レーザー技術を用いた新たな火災検知技術が開発されました。
3. 新たな火災検知技術の詳細
開発された技術では、一酸化炭素に吸収される波長の赤外線レーザーを、リチウムイオン電池の周囲に照射します。異常発火が発生した際に微量発生する一酸化炭素を瞬時に検知できるため、個々の電池にガスセンサを配置する必要がありません。これにより、少数のレーザーガス検知設備によって、多数のリチウムイオン電池を効率的に監視することが可能になります。
実験の成功
これまでの実験で、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社が開発したレーザー式一酸化炭素検知器を使用し、実際にリチウムイオン電池を加熱・発火させる実験に成功しました。この実験により、リチウムイオン電池の周囲で発生する一酸化炭素を的確に検知できることが確認されました。
4. 今後の計画
今後は開発パートナーと連携し、システムの実用化に向けた取り組みを進める予定です。警報の発生条件やシステム全体の仕様などは、使いやすさと安全性を十分に考慮して検討されます。私たちは、革新的な技術を通じてリチウムイオン電池火災の防止に貢献することを目指しており、より多くの人々に安全で安心な環境を提供するシステムの開発を進めます。
5. 新コスモス電機株式会社について
新コスモス電機株式会社は1960年に設立され、1964年には世界初の家庭用ガス警報器を開発しました。「世界中のガス事故をなくしたい」という理念のもと、家庭用ガス警報器や産業用ガス検知警報器、住宅用火災警報器の開発・製造を行っています。国内トッパシェアを誇り、海外市場にも積極的に展開中です。コア技術であるガスセンサ技術をもとに、革新的な商品開発に取り組んでいます。