中小企業におけるESG経営の実態調査結果と課題
近年、ESG(環境・社会・企業統治)に関心が高まっている中で、中小企業がどのように取り組んでいるのかを探るため、フォーバル GDXリサーチ研究所が実施した実態調査の結果が発表されました。この調査は2024年4月から5月にかけて、全国の中小企業経営者に対して行われ、990件の有効回答が得られました。調査結果では、特にG(企業統治)に焦点を当て、企業のガバナンスの状況が明らかになりました。
調査結果のハイライト
企業理念の設定
調査によると、企業の存在意義を示す経営理念を策定している企業はわずか41.5%にとどまり、過半数の企業は自社の方針を明文化していないことが明らかになりました。企業統治の基盤ともなるべき経営理念が整備されていない状況は、業界全般のガバナンスの弱さを示唆しています。これには、企業の従業員が企業方針を理解し適切な行動をとるための重要な指針が欠如していることが影響しています。
コンプライアンスの方針
次に、コンプライアンスや倫理に関する方針については、54.7%の企業がその方針を持たず、多くの企業が法令遵守や倫理的行動について明確な指針を定めていないという結果が出ました。こうした背景は、コンプライアンス違反のリスクを高め、企業の信用失墜を招く要因となり得ます。実際、不正行為に関する方針を持たない企業は42.5%であり、経営者はその周知徹底に努める必要があると考えられます。
税の透明性
税の透明性を確保するためのリスク管理についても厳しい現実が浮き彫りになりました。31.9%の企業が適切なリスク管理を行えていない現状で、自社の方針が不明瞭なまま取引を行っているリスクを抱えています。特に建設業においては、外部の専門家を積極的に活用している企業が多いことがわかり、他業種と比較して税に関するリスク管理が進んでいることが示されました。
第三者認証の取得状況
さらに、業績や社会的責任を客観的に示すための第三者認証や認定を取得している企業について、68%の企業が何も取得していないことがわかりました。特にESGに関連する認定は8社と非常に少ない状況で、これは中小企業向けの認定制度が発展途上にあることが影響していると考えられます。健康経営については180社が認定を受けていますが、ESGの取り組みを外部に示す機会が少ないことが、さらなる取り組みへの壁となっているようです。
企業の現状と今後の展望
今回の調査を通じて明らかになった中小企業のESG経営における課題は多岐にわたります。特に、経営理念の不在やコンプライアンスの方針の欠如は、企業の持続可能性や競争力に直接的な影響を与えるものであり、経営者はその重要性を再認識する必要があります。
また、ESG投資は世界的に見ても重要なトレンドであり、大手企業だけでなくそのサプライチェーンを構成する中小企業にも求められています。早期にESG経営に取り組むことで、競合他社との差別化を図るチャンスも生まれます。企業が直面している課題を乗り越え、持続可能な成長を実現するためのサポートが求められています。
結論
本レポートが中小企業の経営活動におけるESGの理解を深め、より多くの企業が役立つ取り組みを行うための一助となることを期待します。中小企業は日本経済の根幹であり、その成長は国全体の成長につながるのです。
今後も、フォーバル GDXリサーチ研究所は、中小企業のGDXに関する研究結果や情報を提供していきます。