キイロショウジョウバエにおける体内時計の研究
岡山大学が実施した最新の研究により、キイロショウジョウバエの脳に隠されていた体内時計の詳細が明らかとなりました。この研究は、時間生物学の吉井大志教授を中心に、国内外の大学と共同で行われたもので、体内時計を構成する約240個の神経細胞(時計細胞)が特定され、その神経回路のほぼ全貌が解明されました。
研究の背景と目的
体内時計は、私たちの生活リズムや睡眠サイクル、さらにはホルモン分泌などに深く関与しています。そのため、体内時計のメカニズムを理解することは、ヒトを含む多くの動物の健康や行動の理解に不可欠です。これまでも多くの研究が行われてきましたが、その神経回路の詳細は未解明の部分が多く残っていました。
この研究では、神経細胞の数が少ないキイロショウジョウバエをモデルに、新たな手法でそのシナプス結合を通じて時計細胞同士や他の神経細胞との関係性を探りました。その結果、時計細胞がどのように他の神経細胞に接続しているのかが具体的に示されました。
研究成果の意味
研究の結果、240個の時計細胞の中でどの細胞がどの神経細胞と結びついているのか、そしてどのように体内時計を制御しているのかが具体的に分かりました。これにより、体内時計の位置やその機能がより明確になり、体内時計に関する神経科学の新しい時代が到来したといえます。吉井教授は「脳でどのように約24時間のリズムが作られるのか、その配線図が整ったことで、さらに深い理解が得られることを期待しています」と述べています。
今後の展望
この研究は今後、より複雑な脳を持つ動物への応用が期待されています。キイロショウジョウバエで得られた知見を基に、他の動物の体内時計の研究が進むことで、新たな発見がもたらされることが期待されています。また、体内時計の異常が引き起こす様々な病気、例えば睡眠障害や代謝異常などの研究にも貢献することでしょう。
研究成果は2024年12月5日付で英国の科学誌「Nature Communications」に掲載され、科学界でも注目を浴びています。レーザーや高精細な撮影技術を駆使して、体内時計という复杂なシステムを解明する取り組みは、今後ますます進化していくことでしょう。
この重要な発見により、体内時計についての理論が新たに構築され、未来の医学や生物学の進展に寄与することが期待されています。岡山大学は今後も、持続的な研究を進め、地域社会への貢献を図りながら、科学の最前線を築いていくことでしょう。