トンガ火山噴火による電離圏変動の観測
2022年1月、トンガのフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山が大規模な噴火を発生させ、その影響が地球の電離圏に及んでいることが、千葉大学を中心とする研究チームによって確認されました。今回の研究は、ペケリス波による音波共鳴が下部電離圏に与える影響を解明したものであり、これにより無線通信の品質向上が期待されています。
研究チームの陣容
研究に携わったのは、千葉大学大学院工学研究院の大矢浩代助教、環境リモートセンシング研究センターの高村民雄名誉教授、東北大学大学院理学研究科の土屋史紀教授、北海道大学大学院理学研究院の高橋幸弘教授、九州大学国際宇宙惑星環境研究センターの品川裕之研究者など、多彩な専門家からなるチームです。
噴火の影響
トンガの火山噴火は、地球の大気圏にさまざまな影響を与えており、ラム波や大気重力波の発生が報告されています。しかし、これらの影響が下部電離圏にどのように変化をもたらすのかは、これまでの研究では解明されていませんでした。今回の研究では、台湾の受信局が捕らえた標準電波から、下部電離圏のプラズマ密度の変動を詳しく解析しました。
軌跡としての電波
研究チームは、東南アジアに設置されているAVON(東南アジアVLF帯電磁波観測ネットワーク)を活用しました。このネットワークには台湾の受信局が含まれています。解析の結果、地表の大気圧よりもペケリス波が下部電離圏の変化に大きな影響を与えていることが発見されました。この結果は、事前に予測されていた通り、地表と電離圏間の音波共鳴の影響を示しています。
新たな知見
特に、ペケリス波は高度30km以上の成層圏や中間圏の中性大気温度で音波共鳴を起こし、下部電離圏に強い影響を与えました。この現象により、グローバル・サーキットを介して地表の大気電場に変化が現れ、下部電離圏の変動が地上にフィードバックされていることが明らかになりました。
非常に重要な影響
電離圏は長距離無線通信やGPS測位にとって重要な役割を果たしています。この研究成果は、宇宙天気モデルの構築だけでなく、火山活動による空間的な電気環境や通信の信頼性の向上にも寄与するでしょう。
今後に向けて
本研究の成果は、2024年7月16日に国際学術誌「Scientific Reports」に発表され、トンガ火山噴火によるペケリス波が引き起こす下部電離圏の変動が科学界に大きな影響を与えることが期待されています。研究チームはさらに、この知見を基に、さまざまな自然現象が電離圏や無線通信に与える影響を検討していく予定です。
用語解説
- - 電離圏: 地球の大気において分子や原子が電離する領域。無線通信の伝播に重要な役割を果たす。
- - ペケリス波: 地球大気の固有の共鳴振動。特に高度30kmでの音響的共鳴を引き起こす。
- - ラム波: 空気の密度に伴う波動、電離圏に影響を与えることが多い。
これらの研究成果は、今後さらに深い理解を得るための基盤となるでしょう。