昆虫の会話と防除
2022-03-24 11:49:19

昆虫の秘密の会話を利用した画期的な害虫防除法

昆虫の秘密の会話を利用した画期的な害虫防除法



農業における重大な脅威、マメハモグリバエ。その防除には数多くの化学農薬が使用されていますが、安全性や環境への影響が懸念されています。そんな中、静岡大学の研究チームが注目したのは、昆虫の細胞内に感染する微生物「ボルバキア」です。この研究により、ボルバキアの「クオラムセンシング」を利用した新しい防除法が開発されました。

マメハモグリバエとボルバキアの関係



マメハモグリバエは、農作物に深刻な被害を与える害虫の一種であり、ボルバキアに感染しているオスの個体が、未感染のメスと交配することで子孫を残すことが難しくなるという現象が知られています。これを「細胞質不和合」と呼びます。

クオラムセンシングとは?



クオラムセンシングは、微生物同士が化学物質を利用して情報を交換するプロセスです。これにより、微生物間のコミュニケーションが行われ、集団の行動が調整されます。今回の研究では、特定の物質「3O-C12-HSL」を利用し、ボルバキアのコミュニケーションを操作することが目指されました。

研究の成果



実際に、研究チームは野外環境を模した場で、クオラムセンシングを誘発する物質をマメハモグリバエの寄主植物に散布しました。その結果、ボルバキアの感染オスと未感染メスの交配によって、ほぼ全てのマメハモグリバエが死滅する結果を得ました。これは化学物質に依存しない新たな害虫防除法として注目されています。

未来の展望



今後、この手法は他の農業害虫や衛生害虫にも応用される可能性があります。ボルバキアを持つ昆虫にクオラムセンシング誘導剤を用いることで、同様の防除効果が期待されています。この画期的な技術が、持続可能な農業に寄与することが期待されています。

研究の背景と意義



農薬に頼った害虫防除だけではなく、微生物を利用した新たなアプローチは、農業の未来における重要な要素となるでしょう。研究責任者の田上陽介准教授は、昆虫と微生物の相互作用に強い興味を持ち、個体群制御の方法としてクオラムセンシングを活用する研究を進めています。今後は、より効率的で安全な害虫防除のために、更なる研究が期待されます。

研究の詳細



この研究の成果は、2023年に『Journal of Insect Science』に掲載されました。論文タイトルは「Effect of Quorum Sensing Inducers and Inhibitors on Cytoplasmic Incompatibility Induced by Wolbachia in American Serpentine Leafminer」です。具体的な成果は、ドキュメントで確認できます。

この新しい害虫防除法が、農業界にどれほどの影響を与えるのか、今後の動向にぜひ注目してみてください。

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国立大学法人 静岡大学
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