AIで迅速化する身元確認
2019-09-19 11:01:46
南海トラフ大地震に備える新しい身元確認法の研究が進展中
南海トラフ大地震と新たな身元確認技術の可能性
近年、南海トラフ大地震の発生が懸念されています。この地震では、圧倒的な数の犠牲者が予想され、その際に迅速な身元確認が求められます。実は、2011年の東日本大震災を教訓に、身元確認の重要性が再認識され、徳島大学病院が中心となった研究が始まっています。
研究の背景
東日本大震災では、1万人以上の人が犠牲になり、そのうち10%の身元が歯科所見によって特定されました。この出来事は、生前の歯科所見を詳細に記録し保存しておくこと、発災時の迅速な情報収集の必要性を改めて浮き彫りにしました。しかし、現在の身元確認方法は手作業が多く、発生が懸念される南海トラフ大地震では、その方法では対応困難な状況が予想されます。
そこで、徳島大学病院口腔管理センターをはじめ、工学部知能情報工学科や医歯薬学研究部、そしてメディホーム株式会社が共同で研究を行っています。このグループは、デジタル化を通じて、精度の高い情報の収集と分析を目指しています。実用化は2023年を目標にされています。
身元確認の手法
災害時の身元確認は、まず顔や衣服から始まりますが、時間が経過するにつれ口腔内の状況が重要になってきます。歯科所見による身元確認は、デンタルチャートを用いて行われ、口腔内の状態を記録します。これを基に、近隣の歯科医院からカルテやX線写真を取り寄せ、データを照合することで特定されています。しかし、南海トラフ大地震では予想される犠牲者が全国で約32万人にも上るとされ、そのためには大量の歯科医師が必要になります。
デジタル化の必要性
震災時には、歯科医院が被災し、カルテやX線写真の収集が難しくなる可能性があります。これに対処するためにも、平時から口腔内やX線写真の状態を電子化して記録しておくことが求められます。本研究は、この問題を解決するためのものです。具体的には、徳島大学工学部知能情報工学科が画像解析技術を用いて、口腔のデータを自動的に処理します。また、メディホーム株式会社がAIや画像処理を用いて診断データの収集・保存を行います。
各機関との連携
徳島県では、医療機関や介護施設がネットワークでつながり、住民の診療情報を活用する「阿波あいネット」を構築しています。これにより、大規模災害が発生した際には、その情報を迅速に活用することが可能になります。
この取り組みは、国際的にも注目されており、英国の雑誌『Impact』においてもオンライン掲載されています。研究者たちの努力が、今後の大災害時における身元確認の迅速化に寄与することが期待されています。
まとめ
南海トラフ大地震に備え、AIや画像解析技術を駆使した新しい身元確認法が開発されていく中、徳島大学病院とメディホーム株式会社の研究は、迅速な情報収集と分析を通じて多くの命を救う可能性を秘めています。私たちの未来に向けた取り組みとして、この技術が普及していくことを願うばかりです。
会社情報
- 会社名
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メディホーム株式会社
- 住所
- 東京都渋谷区恵比寿1-15-9
- 電話番号
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