東京・新宿区にある工学院大学の田中久弥教授が開発した耳装着脳波センサが、8月22日から23日に開催される「大学見本市2024〜イノベーション・ジャパン」で初公開される。この新しい脳波センサは、耳の周辺に装着することで、従来の煩わしさを軽減し、より手軽に脳波を把握できることが特徴だ。
従来の脳波計測は、通常キャップを被り、導電性のペーストを使用するため、外見が損なわれたり、髪に汚れが付着するなどの不便さがあった。田中教授はこの課題を解決するために、耳介周辺に装着するウェアラブルタイプの脳波センサを設計した。このセンサの最大の利点は、装着が簡単でありながらも、外見に気を使うことなく使用できる点だ。
耳装着型の脳波センサは、すでにイヤホン型として製品化されているものも存在する。しかし、今回の開発品は多チャネル化が容易であり、特定の電位の計測が可能であるという面で、より一歩進んだ技術を提供する。田中教授の研究チームによる実験では、医療用の脳波計との比較を通じて、アルファ波などの周波数特性を正確に計測することに成功している。このことは、従来の方法に比べて、安定した脳波の計測が可能であることを示している。
将来的には、この技術を身体の不自由な方々の意思伝達ツールとしてのbrain-computer interface(BCI)に組み込むことや、SSVEPやASSRといった特定の電位を計測する応用が期待されている。また、このセンサ技術はゲームなどのエンターテインメント分野にも展開できる可能性を秘めている。田中教授は、企業との連携を進め、ヘルスケア分野や障がい者支援など、さまざまな分野に技術を広めていく考えだ。
大学見本市では、訪問者がこのセンサのモックアップを手に取り、実際に体験できる機会が設けられている。具体的な展示タイトルは「耳脳波を日常計測できる電極」で、ブース番号はH-004。また、8月23日(金)12:52から13:00まで、プレゼンテーションも予定されている。
この開発に関する特許情報も公開されており、発明者は田中久弥教授と近藤蒼大氏で、特許出願は学校法人工学院大学が行っている。なお、大学見本市は東京ビッグサイト南展示棟で開催され、来場は無料となっている。参加対象者としては、企業の技術開発担当者や営業責任者、経営者、学校関係者、さらには産学連携やオープンイノベーションに興味のある方々が挙げられている。
この新たな脳波センサ技術がどのように社会に影響を与えていくのか、今後の展開が期待される。