新たな校歌の発見へ:『校歌斉唱! 日本人が育んだ学校文化の謎』
2024年7月25日、新潮社から『校歌斉唱! 日本人が育んだ学校文化の謎』が発売されます。この本は、音楽学者・渡辺裕氏が執筆し、明治から現代にかけての日本全国における校歌の変遷を追いかけた一冊です。著者は東京大学などで教授を務め、数々の賞を受賞した著名な学者であり、校歌がどのように日本独自の文化として育まれてきたのかを考察しています。
校歌の起源とその変遷
本文の中では、校歌が欧米から導入された「コミュニティ・ソング」として始まり、日本独自の土着文化に進化していった過程が詳述されています。学校の歴史や新聞などの資料を基に、校歌がどのように歌われ、形を変え、または保持されてきたのか追求しています。
学校行事における校歌の役割
校歌は入学式、卒業式、学園祭、体育大会などの学校行事で生徒や教員、OBに歌われますが、その歌がどのようにして成り立ったかを掘り下げています。旧制高校や高等女学校における独自の変化、戦後の男女共学化による影響など、様々な視点から分析が行われています。
具体例の魅力
本書では、さまざまな校歌の事例も紹介されています。例えば、盛岡一高では「軍艦マーチ」の旋律が校歌として取り入れられており、修猷館高校では同じ歌詞が異なるメロディで歌われているなど、興味深い話が多数あります。また、浜松北高では甲子園出場が決まったのに校歌が存在しなかったための苦悩や、田子浦中学がヘドロ公害の影響で校歌変更の危機に直面したエピソードなどもあり、どれも校歌が持つ社会的背景を映し出しています。
音楽社会史の視座から
渡辺裕氏は、校歌を通じて音楽の時代を反映する力を表現しています。本書によると、校歌はまさにその時代の気持ちや価値観を表すための一種の「音楽の機微」であると言えるでしょう。実際に、多くの校歌がどのようにして歌われ、改訂され、保存されてきたのかを、さまざまな具体例を通じて読み解くことができます。
読者へのメッセージ
推薦文を寄せた細川周平氏は、この本の特長を「具体例を巧みに抽象的な文化史の枠組みに配し、歌う人の行動や意図を明らかにする」と指摘しています。読者は校歌についての理解を深め、新たな発見をする権利があります。名作としての背景や事実を知りたい方には、非常に魅力的な一冊です。
締めくくり
渡辺裕氏の『校歌斉唱! 日本人が育んだ学校文化の謎』は、校歌という一見単純に思える音楽の裏に潜む歴史や文化を知るための貴重な資料です。校歌が果たす役割や、その変遷の意味を理解することは、私たちが学校で過ごした時間を振り返る手助けとなるでしょう。また、本書によって、校歌に対する新たな視点を持つことができるはずです。