原子核時計実現へ前進
2024-07-16 20:11:27

X線で原子核の寿命制御に成功! 超高精度「固体原子核時計」実現へ前進

X線で原子核の寿命制御に成功! 超高精度「固体原子核時計」実現へ前進



岡山大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、京都大学、理化学研究所、大阪大学、産業技術総合研究所(産総研)、ウィーン工科大学からなる共同研究グループが、大型放射光施設「SPring-8」を用いて、固体結晶中のトリウム229原子核のアイソマー状態をX線で制御することに成功しました。この成果は、超高精度な「固体原子核時計」の実現に向けた大きな一歩となります。

トリウム229原子核は、自然界で最小のエネルギー準位を持つ原子核として知られています。この特性を利用することで、従来の原子時計をはるかに凌駕する精度の時計、「原子核時計」の開発が期待されています。原子核時計は、GPSなどの測位システムや測地学をはじめ、基礎物理研究にも革新をもたらす可能性を秘めています。

これまで、原子核時計実現に向けた課題として、固体中のトリウム229のアイソマー状態がどのように脱励起するのか、また、その寿命をどのように制御するのかが挙げられていました。本研究では、SPring-8の高輝度X線を用いることで、固体結晶中のトリウム229をアイソマー状態に励起し、その脱励起過程を詳細に観測することに成功しました。

その結果、アイソマー状態のほとんどが光を放出して基底状態に戻ることを確認し、その寿命とエネルギーを正確に測定しました。さらに、X線を照射することで、アイソマー状態の寿命を10分の1程度に短縮できることを発見しました。これは、固体結晶中のアイソマー状態を外部から制御できることを示す画期的な成果です。

今回の成果は、固体原子核時計の実現に向けて、大きな進展をもたらします。原子核時計は、従来の原子時計をはるかに超える精度を持つため、さまざまな分野で革新的な応用が期待されています。例えば、GPSなどの測位システムの精度向上、地震や火山活動の予測、重力場の精密測定、暗黒物質の探索など、幅広い分野で貢献が期待されています。

本研究は、英国学術雑誌「Nature Communications」に掲載されました。

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