根寄生雑草コシオガマの新たな発見
明治大学農学部の瀬戸義哉准教授を中心とした研究チームは、根寄生雑草の一種であるコシオガマにおいて、宿主植物を認識するための高感度の受容体を特定しました。この研究は、2024年9月13日に国際学術誌『Plant & Cell Physiology』に発表され、新たな植物生理学の理解に寄与するものと期待されています。
コシオガマの生態
コシオガマは、栄養が不足すると近くの宿主植物の根へと寄生し、水分や栄養素を吸収して生育する雑草です。これまでの研究で、コシオガマは絶対寄生植物とは異なり、単独でも生育可能な条件的寄生植物であることが示されています。興味深いことに、コシオガマは発芽をする際に植物ホルモンであるストリゴラクトン(SL)を必要としないことが知られていました。
発見された受容体の機能
研究チームは、コシオガマに存在するKAI2dファミリーの遺伝子に注目し、これがSLを認識する受容体として機能することを解明しました。その結果、かつては未知であったKAI2dの一つが、極めて高い感度でSLを認識できることを発見しました。このことは、条件的寄生植物であっても、高感度に宿主由来の植物ホルモンを認識するメカニズムが存在することを示しています。
研究の手法
研究者たちは、コシオガマのKAI2d遺伝子を用いて、タンパク質の相互作用を調査しました。実験では、Differential Scanning Fluorimetry(DSF)法を用いて、SLとの相互作用を測定。その結果、少なくとも3つのKAI2d遺伝子が、合成ストリゴラクトンに依存して変性温度が低下する現象が確認されました。これによって、これらの受容体がSLを検知する能力を持っていることが判明しました。
発芽におけるSLの役割
もう一つの実験では、コシオガマの種子を用いて、SLが発芽プロセスにどのように関与しているかを調査。従来の研究では、ジベレリンがSLによる発芽刺激に寄与していることが分かっていますが、この研究では、ジベレリンの生合成阻害剤を用いた際に、SLが果たす役割が検討されました。
結果として、SLの添加が発芽を回復するとは限らず、コシオガマでは、SLが発芽以外のメカニズムに作用している可能性が示唆されました。この新たな知見は、根寄生雑草の宿主認識や生態の理解において重要な手がかりとなります。
今後の展望
本研究の結果は、コシオガマのKAI2d受容体が、宿主植物から分泌される低濃度のSLを高感度に受容する仕組みを持つことを示し、植物生理学における新しい視点を提供します。今後の研究では、受容体の生化学的メカニズムをさらに解明し、根寄生雑草による農業被害を軽減する手立てが探求されることが期待されます。寄生植物に関する理解が深まることで、今後の農業や生態系への影響も注視されるべきです。
用語解説
- - 絶対寄生植物: 他の植物に寄生しないと生育できない植物。
- - 植物ホルモン: 植物の成長を調節する化学物質。
- - 条件的寄生植物: 宿主がないときは単独で生育する植物だが、宿主が近くにいると寄生する。
本研究の進展により、コシオガマの生態が解明されることで、根寄生雑草の管理戦略や農業実践において新しいアプローチが期待されます。