電池発火事故を防ぐ革新的技術:IGS社の非破壊検査システム
近年、電気自動車やスマートフォンなどに使用されるリチウムイオン電池の発火事故が世界中で増加しています。この問題に対し、株式会社Integral Geometry Science(IGS)が開発した画期的な「インライン全数検査用 電池非破壊画像診断システム」が注目を集めています。
従来、電池メーカーではエージング試験と呼ばれる方法で不良品を検出していましたが、潜在的な不良品を見逃すケースが多く、発火事故につながるリスクがありました。IGS社のシステムは、世界初の計算理論に基づき、電池内部の電流密度分布を非破壊で可視化。これにより、従来の検査では見つけることができなかった微細な不良や、出荷基準を満たす製品に潜む潜在的なリスクまでも検出することが可能になりました。
システムの特長
IGS社のシステムは、以下の特長を備えています。
電池内部の電流密度分布の可視化: 電池の動作や寿命に直結する電流密度分布を透視することで、故障原因の特定に繋げます。
非破壊検査: 電池を破壊せずに検査できるため、検査後の品質を維持できます。
良品電池の電流ムラ検出: 良品とされる電池内部に存在する電流ムラや微小な短絡を検出し、より厳格な品質管理を実現します。
全数検査の実現: 従来の抜き取り検査に比べ、全数検査が可能になるため、不良品の市場流出リスクを大幅に軽減します。
システムは、電気が異常に集中する部分を異なる色で表示することで、直感的に不良箇所を把握できます。この技術により、より安全で信頼性の高いリチウムイオン電池の製造・供給に貢献することが期待されます。
第65回電池討論会での発表
IGS社は、2024年11月20日から22日まで国立京都国際会館で開催される「第65回電池討論会」に出展し、このシステムを実際に公開します。また、11月21日には、「サイクル試験に伴う電池内電流密度空間分布の非破壊映像化に関する研究」と題した講演も行われます。講演では、開発した機器と、サイクル試験における電流密度分布の変化を映像化した結果について詳細な発表が予定されています。
IGS社について
IGS社は、「これまで誰も見たことのない隠された世界を撮影する」というビジョンのもと、独自の透視技術を研究開発する企業です。2012年、木村建次郎博士と木村憲明博士が世界で初めて「散乱の逆問題」を解くことに成功。この技術は日米中欧など世界各国で特許を取得しており、その成果を社会実装するため、IGS社が設立されました。神戸大学インキュベーションセンターを拠点に、透視技術の研究開発と実用化に力を入れています。
まとめ
IGS社の非破壊画像診断システムは、リチウムイオン電池の安全性を飛躍的に向上させる革新的な技術です。この技術の普及により、EVやスマートフォンの普及拡大に伴う発火事故リスクの軽減に大きく貢献し、より安全な社会の実現に繋がるでしょう。今後の展開に期待が高まります。