熊本大学とTOPPANが開発した古文書解読技術で防災計画を強化へ

日本の歴史資料として、数十億点以上残存する古文書。しかし多くは現代では解読が困難な「くずし字」で書かれており、悪影響を及ぼすこともあります。こうした中、熊本大学とTOPPAN株式会社が共同で開発したAI-OCR技術は、古文書の解読を一変させる可能性を秘めています。

このプロジェクトの中心にあるのは、熊本大学に寄託された「細川家文書」です。これは江戸時代の細川藩に関する貴重な歴史資料で、その内容はさまざまな社会的事件や統治制度の変容を示しています。具体的には、細川家の奉行所の執務記録や藩主細川忠利の命令記録など、合わせて約5万枚にも及ぶ古文書が対象です。解読の結果、930万文字におよぶテキストデータが生成されました。

さらに今回の取り組みでは、これらのデータを検索できるシステムも統合しています。これにより、約90年間にわたる細川藩領の歴史を即時に探し出し、研究や防災計画にも役立てることが可能になります。特に地震や洪水、疫病、飢饉など、災害に関連する記述が300件以上見つかり、歴史的な自然災害やその影響を知る上で重要な情報が浮かび上がりました。

この技術の開発は、古文書の解析における新たな手法を提供するものであり、過去の重要なデータを現代に活かす方法としても期待されています。熊本大学はこの結果を受けて、社会史研究のさらなる発展に努めると同時に、地域の防災意識を高めるための課題にも取り組む考えです。

TOPPANは既に、古文書解読支援システム「ふみのは®」の開発にも参画しており、全国の教育機関や資料館と提携を深め、貴重な歴史資料の研究や活用を促進しています。古文書が持つ歴史的価値は計り知れず、今後の研究によって新たな発見が期待されるでしょう。

特に、解読した細川家文書から得た災害関連の情報は、熊本における地域防災に不可欠なデータとなり得ます。今回のプロジェクトがもたらした成果は、単なる学術的な意義だけでなく、実際の防災計画や地域活性化にも貢献する道を示しています。

熊本大学とTOPPANは今後も、「細川家文書」やその他の資料の徹底的な解読と分析を続け、藩政史料の重要性が広く認知されることを目指します。これらの取り組みにより、過去の貴重な情報が未来に繋がり、地域や社会の発展に寄与することが期待されています。

今後の展開として、熊本大学は江戸時代の社会変容を理解し、研究を深化させることに力を入れるとともに、TOPPANはAIやデータ解析技術を駆使しながらさらなる精度向上を目指していきます。この試みがもたらす未来につながる成果に、期待を寄せたいと思います。