岸田総理、旧優生保護法問題で原告団等と面会:謝罪と新たな補償の検討を表明
令和6年7月17日、岸田総理は総理大臣官邸で旧優生保護法国家賠償請求訴訟原告団等と面会し、過去の法施行による被害者への謝罪と新たな補償制度の検討を表明しました。
総理は冒頭の挨拶で、7月3日の最高裁判決を「大変重く受け止めている」と述べ、旧優生保護法に基づく施策によって多くの人が不妊手術を受け、心身に多大な苦痛を受けたことを痛感していると語りました。
「旧優生保護法は憲法違反であり、同法を執行してきた立場として、その執行の在り方も含め、政府の責任は極めて重大なものがあり、心から申し訳なく思っており、政府を代表して謝罪申し上げます。」と、政府を代表して謝罪の言葉を述べました。
さらに、総理は「優生手術等は、個人の尊厳を蹂躙(じゅうりん)する、あってはならない人権侵害であり、皆様方が心身に受けられた多大な苦痛と、長い間の御苦労に思いを致しますと、その解決は先送りできない課題です。」と、問題解決に向けて政府が積極的に取り組む姿勢を強調しました。
具体的な取り組みとして、総理は新たな補償制度の検討を加速させることを表明しました。国会とも相談しながら、可能な限り早急に結論を得られるよう、関係大臣に指示を出しており、超党派の議員連盟における議論もすでに開始されているとのことです。
また、総理は「訴訟におけるこれまでの政府の主張について、御意見も頂きました。最高裁判決では、国が皆様方からの損害賠償請求権の行使に対して除斥期間の主張をすることは、信義則に反し、権利の濫用として許されぬとしています。これまでの判例を踏まえた主張であったとしても、政府の様々な主張自体が、皆様方のお気持ちを傷つけるものであったことについて、皆様方が感じられた思いを重く受け止めたいと考えております。」と、過去の政府主張について反省の言葉を述べました。
さらに、総理は、現在係属している最高裁判決以外の訴訟については、除斥期間による権利消滅の主張を撤回し、優生手術の実施が認められる訴訟については、和解による解決を速やかに目指すことを明らかにしました。
総理は、新たな補償制度の基本方針として、①現在訴訟を起こされていない方々も含めた幅広い方々を対象とすること、②本人のみならず配偶者の方々が受けた苦痛も視野に入れること、③確定した判決に示されている金額も踏まえつつ十分かつ適正な補償の額とすること、などを挙げ、超党派の議員連盟と調整しながら、議員立法の検討を進めていくことを表明しました。
加えて、総理は、新たな補償制度が被害者の皆様に広く届くよう、周知徹底の在り方についても検討を進めていくことを約束しました。
最後に、総理は「全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しながら共生する社会の実現に向けて、政府として、最大限の努力を尽くしてまいります。」と、優生思想の根絶に向けた決意を表明しました。
総理は、優生思想の根絶に向けた取り組みとして、教育・啓発などを強化するため、全府省庁による新たな体制を構築していくことも明らかにしました。
今回の面会では、総理は原告団等の意見を真摯に聞き取り、政府の責任を深く認識した上で、新たな補償制度の検討を加速させ、優生思想の根絶に向けて具体的な取り組みを強化することを約束しました。今後、政府がどのような具体的な対策を打ち出し、被害者の救済と社会全体の意識改革につなげていくのか、注目されます。