名古屋大学の新たな医療安全技術
名古屋大学医学部附属病院とゼロハーム株式会社が共同で開発したインシデントレポートシステムが、2026年に商用化されることが決定しました。これは、医療事故の防止や患者の安全確保に向けた新しいアプローチを提供するものです。名大病院の安全推進部門が積み上げてきたデータを活用したこのシステムは、医療現場におけるミスやヒヤリ・ハット事例を効果的に管理するための重要なツールとなるでしょう。
インシデントレポートシステムの背景
名古屋大学医学部附属病院は、日本国内で唯一、国際医療評価機関であるJCIの認証を有する病院です。この病院は数十年にわたり、患者安全に関して先進的な取り組みを行ってきました。その中で、院内の医療事故防止に向けて集められたヒヤリ・ハットや事故データを基に、医療の安全性を向上させるためのシステムを開発することに努めてきました。
特に、インシデントレポートのシステム化は、医療事故の発生を未然に防ぐための重要な要素です。この新システムは、AI技術を駆使して、過去数年間のインシデントデータを分析し、重症度や過失の数値化に成功しています。
商用化への道
ゼロハーム社は、名大病院の技術を用いて次世代型インシデントレポートシステム「Zeroharm」を開発。2026年に全国の医療機関での導入を予定しており、事前の「Zeroharm β版」無償先行利用プランもスタートしています。このプランは限定20施設に向けて提供され、医療現場での実際の使用例を集めて制度をさらに改善していく意向です。
安全性を数値で可視化
本システムは、名古屋大学が蓄積してきた約12万件のインシデントデータをもとにしたAIによる分析を確立し、医療事故発生のリスクを客観的に数値化します。これにより、病院の安全性が実際にどのように向上しているかを定量的に測定できるという点が、新たな価値を提供します。
また、インシデントの報告は匿名で行えるため、医療従事者の心理的負担を軽減しやすく、報告文化の定着を促進します。独自の機能により、より迅速かつ容易にレポートを作成できる仕組みも整っています。
医療現場の協力
この取り組みは、医療安全管理者にとっても大きな利点となります。医療機関は各自のインシデントデータを持ち寄り、リスク評価や改善に向けた協力を行うことが可能になります。これにより全国的な医療事故防止の強化が期待されています。
名古屋大学とゼロハーム社は今後も機能の充実化を図り、リアルタイムでの医療安全の測定を可能にするシステムの開発を推進していきます。
専門家の声
名古屋大学医学部附属病院の長尾能雅教授は、この取り組みについて「医療現場でのヒヤリ・ハットを財産と捉え、ゼロハームを実現するために連携していくことが重要です。ユーザーの皆様との協働が、患者の安全をさらに確かなものにしていくと信じています」と述べています。
このように、名古屋大学発の新たな医療技術が、全国の医療機関における患者安全の向上に大きな貢献を果たすことが期待されています。私たちは、この新技術による医療現場の変革に目を向け、注目していきたいところです。