産総研が拓くナノ構造金型技術の新境地
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)の竹村謙信主任研究員と本村大成研究チームが、驚くべきナノ構造金型を作成する技術を開発しました。この技術は、生体素材からナノ構造体を金型成型することを可能にし、高耐熱性も併せ持つシステムを実現しました。
生体素材が持つナノ構造の重要性
生物に見られるナノ構造は、超撥水性や接着性など、工業製品に有用な機能を提供します。これを適切に利用することができれば、高機能材料の工業生産が実現可能です。しかし、これまでのナノ構造金型の製造は、工程や設備の複雑さから産業利用が難しいという課題がありました。
画期的な金型成型技術の誕生
新たな技術では、熱に敏感な素材でも低温プロセスで成膜し、金型の作製が可能となっています。この技術を使い、トンボの複眼という高難易度なモデルを原型に活かし、ナノ構造を樹脂に転写することに成功しました。トンボの個眼は非常に微細な構造を持ち、そのナノ構造による曇りにくい機能が金型から再現されることを実証しました。これにより、溶融ガラスを用いた精密な成型も可能であることが明らかになりました。
具体的な研究の経緯
産総研では、金属成膜に用いるマグネトロンスパッタ技術の向上に取り組んできました。この技術はプラズマを使用し、様々な材料を微粒子として飛ばすことができますが、加熱による原型への影響が課題でした。新たに開発した制御技術により、加速された電子が原型に当たらないようにし、熱素材の使用を可能にしました。
飛躍するナノ構造金型の利用可能性
この技術により、トンボの複眼のナノ構造を持った金型が誕生。透明なエポキシ樹脂を流し込んで成型すると、個眼表面の機能を活かした製品が得られました。また、実験では水蒸気による曇りも防ぎ、汎用性の高いナノ構造体を用いた量産の可能性が見えてきました。これにより、特に光学特性を重視した製品群への応用が期待されます。
今後の展望
今後は、さらに高機能で安価なナノ構造体の量産化が目標です。この技術は、ドローンや自動運転技術などに応用できる可能性があります。トンボの複眼の特性を最大限に活かし、視覚技術を進化させる未来がアナウンスされています。
研究の成果
この研究成果は、2024年11月4日に「Advanced Materials Interfaces」に掲載され、同時に表紙にも登場します。今後の展開に注目が集まります。