日本における認知症研究の新たな挑戦、J-TRC構築研究の開始
2023年10月31日、国内の認知症研究の一環として『トライアルレディコホート(J-TRC)構築研究』が始まりました。現時点では、認知症の症状が現れていない状態での介入を目指しており、アルツハイマー病(AD)をはじめとした認知症性疾患への理解を深める重要なプロジェクトです。
認知症患者の急増とその背景
厚生労働省の推計によると、2025年までに国内での認知症患者数は730万人、2050年までには1,016万人に達するとされています。特にADがその約70%を占め、この疾患に対する早急な対策が求められています。研究者たちは、この問題に対処するため、特に認知機能に障害が見られない早期段階の患者に治験の参加を促しています。
現在の治療薬・予防薬の開発状況
治療や予防薬の開発が進む中でも、認知症の症状が現れた患者には効果的な治療が難しいことが課題です。これによって、症状がないが病理変化が始まっている「プレクリニカル期」や軽度の症状しかない「プロドローマル期」の方々が早期発見・治療のためにも重要な役割を担います。ただし、現段階では参加者が治験に組み入れられる割合はわずか20%程度で、多くの人が治験の機会を逃しています。
J-TRC研究の目的とプロセス
この研究では、50歳から85歳までの日本語を理解できる男女を対象に、オンラインでボランティアの募集を行います。国内最大規模を目指して、まず約2万人のボランティア参加者を募ります。この登録過程では、参加者の認知機能を評価するためのシステムがインターネット上で構築され、登録者は15分程度のテストを受けることになります。
このテストにより、「プレクリニカルAD」の可能性がある方を特定し、3ヶ月ごとに再検査を実施します。結果に基づいて、リスクが高いと判断された参加者には、医療機関でのより詳細な検査に参加する機会が提供されます。このプロセスでは、認知機能検査や血液、画像検査などが実施され、治験に参加する意向のある方には、条件に応じた情報が提供されます。
研究組織とその連携
研究は、東京大学の岩坪威教授を中心に実施され、国内の医療研究機関や製薬企業、国際的な研究機関とも連携を図っています。特に、米国で行われているトライアルレディコホート研究(TRC-PAD)との連携が期待されており、最新の技術を使ってデータを収集することが目指されています。
登録手順と参加条件
研究に参加を希望する方は、専用のウェブサイトから基本情報を登録することでボランティアに応募できます。参加には以下の条件があります:
- - 50歳から85歳までの日本語理解者であること。
- - 過去または現在に認知症またはADと診断されたことがないこと。
- - 臨床試験への参加意欲があること。
- - インターネットを通じての参加が可能であること。
研究の意義と期待される成果
J-TRC研究は、アルツハイマー病をはじめとする認知症治療薬の開発に役立つ情報の収集を目的としています。プレクリニカルADの参加者には、世界的に行われている最先端の予防治験への参加機会も用意される見込みです。参加者がこのプロジェクトを通じて、より多くの人々の健康に貢献することを目指しています。
このプロジェクトに興味のある方は、ぜひ公式サイトを訪れて、ボランティア登録を検討してみてください。
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