企業におけるビジネスケアラー支援の現状と課題
株式会社マイナビはこのほど、ビジネスケアラー支援の実態に関する調査結果を発表しました。特に、介護を行いながら仕事を続ける人々に焦点を当てたこの調査は、民間企業の人事や労務関連業務を担当する618名を対象に行われました。近年、日本は高齢化が進んでおり、ビジネスケアラーの存在はますます重要になっています。しかし、企業がこれに対してどのように支援しているのか、その実態はどうなのでしょうか。
支援制度の認知度と現状
調査結果によると、育児・介護休業法の改正について企業がどの程度理解しているかを問うたところ、認知度は9割以上に達しましたが、実際の改正内容について理解している企業は54.9%にとどまっています。特に、介護離職防止のための制度については、既に制度があったか、改正に対応した制度が整えられたかを考慮すると、双方を合わせて約48%に過ぎません。
一方で、「ビジネスケアラーへの支援制度があり、十分である」と考える企業はわずか11.5%でした。もっとも多かったのが、「支援制度があるが見直しが必要」という回答で、これは24.4%を占めました。また、「制度が無く、早急に取り組む必要がある」という806.5%と合わせると、全体の半数を占めています。この結果から、企業が多くの課題を抱えていることが伺えます。
介護との両立をどう支援しているか
調査では、介護を行う社員に対して勤務時間の調整ができる企業が45.5%で最も多いことが明らかになりました。具体的には、フレックス勤務や短時間勤務を可能にする取り組みが進んでいます。また、介護休暇や介護業務の流れを社内で周知している企業も41.9%あり、柔軟なテレワークやリモートの実施が38.5%と続きます。このように、多様な働き方に対応した制度が整備されつつあることは重要です。
問題が顕在化するまで待つ企業
ビジネスケアラー支援を促進するきっかけについて尋ねたところ、「介護を行う社員が増えた場合」という回答が43%で最多でした。この現状から、企業が志向するのは課題が明らかになった際に動き出すという点です。特に2025年問題と呼ばれる、団塊世代の高齢化が進む中で、企業における「ビジネスケアラー」との温度差をどう埋めていくのかが課題となります。従業員は自身の介護状況を会社に伝えづらい場合も多いですが、この実態を把握できる環境を整えることが重要です。
課題解決に向けた第一歩
本調査を通じて明らかになったのは、ビジネスケアラー支援が育児支援に比べて遅れているという現状です。この原因の一つには、介護を行う社員の実情を把握することの難しさが挙げられます。そして、経済産業省による試算では、今後「仕事と介護の両立」による経済損失が2030年には9.2兆円に達するという見込みもあります。いかに早急に対処していくかが企業に求められています。まずは、経営者や管理職が社員の実態を理解し、状況に応じたサポートを提供することが求められています。
結論
今後、ビジネスケアラー支援は企業の持続可能な発展を支えるキーファクターとなるでしょう。制度の整備はもちろん、社員一人ひとりのニーズに応じた理解と支援を進めることが、企業にとっても従業員にとっても有益になります。まずは課題を正しく把握し、解決への第一歩を踏み出しましょう。