新しい難病治療の扉を開く研究結果
九州歯科大学の研究チームが、脊椎骨端骨幹端異形成症2型(通称SEMDJL2)の病態を引き起こす遺伝子の機能について明らかにしました。この疾患は、低身長や四肢の成長障害、顎顔面の異常などを特徴とし、患者に深刻な影響を及ぼします。研究によると、キネシンファミリータンパク質であるKIF22の遺伝子に変異が見られ、その機能が低下することが分かりました。
KIF22の役割とは
KIF22は、細胞分裂の過程で重要な役割を果たすタンパク質です。この新しい研究では、KIF22の機能が見失われると、軟骨細胞における細胞分裂が正常に行われなくなることが示されました。これは、軟骨の成長が妨げられ、最終的には骨全体の成長に影響を与える原因となります。
研究成果の詳細
研究チームは、KIF22の機能を喪失した遺伝子変異モデルマウスを作成し、成長板の厚みや骨の長さが減少することを確認しました。また、KIF22変異マウスの軟骨細胞を分析したところ、細胞分裂時に必要な紡錘体の形成が不十分で、細胞増殖が遅れることが明らかになりました。さらに、SEMDJL2患者の細胞でも同様の遺伝子変異が確認され、同じメカニズムが働いていることが示されました。
未来の治療法への期待
これらの知見は、脊椎骨端骨幹端異形成症の治療法開発に向けて重要な一歩となると期待されています。KIF22は軟骨細胞に多く存在し、増殖を調整する役割があるため、再生医療における新たなターゲットとして注目されています。
研究の意義
本研究の結果は、2024年7月19日に発表されるiScience誌に掲載されました。これは、遺伝子研究や細胞生物学の分野において、これまでの知見を大いに進展させるものであり、患者に新たな希望をもたらす可能性があります。
謝辞
この研究は日本学術振興会の科学研究費助成によって支援を受け、研究の進展に貢献しました。
研究チーム紹介
九州歯科大学分子情報生化学分野の准教授、松原琢磨氏が中心となり、川上紘佳大学院生や古株彰一郎教授などのチームによって進められました。更なる研究が進むことで、SEMDJL2の治療法が確立されることを期待しています。