AWaRe分類と抗菌薬適正使用の重要性
最近、WHOが提唱した抗菌薬適正使用支援ツール「AWaRe」について、新たな診療報酬制度が導入されることが発表されました。この制度は、抗生物質の使用を最適化し、薬剤耐性のリスクを低減することを目的としています。日本における現状と課題を多角的に見ていきましょう。
AWaRe分類とは?
AWaRe分類は、抗菌薬を「Access(アクセス)」「Watch(ウォッチ)」「Reserve(リザーブ)」の3つのカテゴリーに分け、患者の医療における適正使用を促進するものです。特に、日常的に使用される抗菌薬が「Access」に分類されており、これらは高品質で低コストで利用可能です。それに対し、「Watch」は使用が必要とされるが、抗菌薬耐性の拡大を防ぐために慎重に使用すべき薬剤であり、「Reserve」は最後の手段として位置づけられます。
日本の現状と課題
日本における「Access」に分類される抗菌薬の使用割合は、2023年時点で23.23%と、WHOが目指す60%には程遠い状況です。この低い割合は、適正な抗菌薬の使用が地域医療の中で徹底されていないことを示しています。特に感冒など、抗菌薬が必要ない疾患に対しても処方されるケースが目立ちます。これが抗菌薬耐性の悪化を招く要因となっています。
新たな診療報酬加算制度
2024年4月からは、抗菌薬適正使用体制加算が新設され、Accessに分類される抗菌薬の使用率が60%以上となることが求められます。この加算制度は、適正使用を促進するためのものであり、医療機関が参加するサーベイランスに基づいて数値が算出されます。医療機関は、Accessの使用率が上位30%に入ることで加算を受けることが可能です。
研究者たちの見解
国立国際医療研究センターの研究者松永展明氏は、AWaRe分類が抗菌薬使用の適正化に重要な役割を果たすと指摘しています。しかし、AWaRe分類を単純に参照するのではなく、臨床的な判断に基づき、感染症の診断と治療において必要な薬剤を選択することが重要です。
期待される効果
この新制度の導入は、適切な抗菌薬の使用を促進し、患者の治療効果を高めるとともに、将来における薬剤耐性の発生リスクを低減させることにつながると期待されています。このように、AWaRe分類は抗菌薬の適正使用を促進するためのシンプルでありながら強力な指標となるでしょう。
まとめ
抗菌薬の適正使用は、今後の医療における重要な課題です。我々は、医学の進歩と共に、AWaRe分類などの枠組みを活用し、より良い医療を提供していく必要があります。