温暖化にも耐えるイネ
2021-04-30 11:30:07

地球温暖化に強い新たなイネ品種の基礎研究が進展

地球温暖化に強いイネの開発



最近、地球温暖化に適した新しいイネの品種開発に関する研究が注目を集めています。東京大学大学院の博士課程のQu Yuchen氏や、矢守航准教授を含む研究チームが発表したこの研究は、光合成の重要な酵素であるルビスコと、活性化を促進するルビスコアクチベースを強化した二重形質転換体イネを作出することに成功したもので、高温環境下でも高い生産性を維持することが期待されています。大気中の二酸化炭素を固定するルビスコは、植物の生産性を左右する最も重要な酵素ですが、高温ストレスによってその機能が影響されるとされています。これにより、地球の年平均気温が1℃上昇するごとに、イネの収量が17%減少することが報告されています。

高温に対抗する新しいアプローチ



この研究では、ルビスコとアクチベースの遺伝子を二つの異なるプロモーターを用いて同時に導入し、それぞれの発現をバランスよく調整することで、高温環境下でもイネの光合成能力を向上させました。研究者たちは、トウモロコシ由来の高温環境への耐性を持つアクチベースを利用し、イネ由来のルビスコと連携させることで生産性の向上を図りました。その結果、二重形質転換体イネは、野生型と比較して、40℃という高温の環境下で光合成速度を20%向上させ、最終的な植物体重量は26%増加しました。

食料安全保障の重要性



世界中で増加する人口に対して、持続可能な食料供給の確保は喫緊の課題です。近年の気候変動の影響により、作物の生産性が脅かされています。このような状況下で、高温耐性作物の開発は特に重要です。高温に耐えるイネを育成することができれば、将来的に予想される気温上昇に直接的に対応し、食料危機を回避する手段の一つとなり得ます。

未来への道筋



今後の研究では、温暖化環境における光合成のメカニズムをさらに解明し、ルビスコの活性化を最大限に引き出す方法を探求する必要があります。この研究成果は、地球規模での食糧の確保や大気中のCO2濃度の削減に寄与することが期待されています。

2021年4月には、研究結果が国際的な学術誌『Plant, Cell & Environment』に掲載され、今後の注目されるべき研究の一つとなるでしょう。この研究は、私たちの未来の食料問題解決への一歩と言えるでしょう。

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