研究の概要
早稲田大学の朝日透教授を中心とする共同研究チームが、銅酸化物高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δ(Bi2212)の紫外・可視光領域における光学的異方性のメカニズムを解明しました。この成果は2024年11月7日に『Scientific Reports』誌に発表されました。
研究の背景
銅酸化物高温超伝導体Bi2212は、その超伝導転移温度が従来の理論であるBCS理論の限界を越えているため、長年にわたり研究の対象となっています。この物質の超伝導メカニズムの解明は、科学界の大きな課題の一つです。
主な発見
研究グループは、フローティングゾーン法を用いて、異なるPb含有量のBi2-xPbxSr2CaCu2O8+δ単結晶を育成しました。育成した結晶に紫外・可視光を透過させ、透過測定を行うことで、Bi2212の「うねり構造」が光学的異方性に及ぼす影響を調査しました。
その結果、Pbの含有量を増やすことで光学的異方性は単調に減少し、本研究が示すところによると、これがうねり構造に関連していることが明らかになりました。具体的には、Pb置換により様々な光学的測定がより正確になることが期待され、特に高温超伝導のメカニズムにおける重要な対称性の破れの探求が可能となります。
技術的なアプローチ
研究チームは、新たに構築した一般化高精度万能旋光計(G-HAUP)を使用して、紫外・可視光領域における光学的異方性を高精度で測定しました。この測定の結果、不整合変調の影響を受けた光学的特性が明らかになり、Pb含有量の増加に伴う変化も確認されました。
研究の波及効果
本研究の成果は、銅酸化物高温超伝導体の光学的性質と電子バンド構造の理解を深め、高温超伝導メカニズムの解明に寄与する可能性があります。これは更なる超伝導体開発への道を開くものです。また、常温超伝導の実現が期待され、様々な技術革新にもつながるかもしれません。
今後の展望
研究チームは、今後低温まで冷却可能なG-HAUPを利用し、擬ギャップ相と超伝導相における特性の詳細な解明を目指しています。これにより、超伝導メカニズムに対する理解が一層深まることが期待されます。
今後の研究進展が高温超伝導体の新たな可能性を切り開くことに期待が寄せられています。