2023年1月1日に発生した令和6年能登半島地震による建築物への被害が、国土技術政策総合研究所(以下、国総研)と国立研究開発法人建築研究所(以下、建研)によって詳細に調査され、その結果が各研究所の公式ウェブサイトで公開されました。この報告は、地震発生後およそ10ヶ月間にわたり実施された調査の成果をまとめたもので、今後の住宅再建や地域復興に向けた重要な情報が含まれています。
本報告の目的は、能登半島地震による建築物の構造的な損傷の特徴を分析し、その原因を明らかにすることです。国総研と建研は、国土交通省住宅局と連携し、「令和6年能登半島地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会」を設置し、具体的な対策の方向性を検討しています。報告書には、市街地火災の結果や住まいの再建、地域復興に関するデータも含まれており、今後重要な資料となるでしょう。
木造建築物の被害状況
調査の結果、木造建築物における被害状況が明らかになりました。特に、旧耐震基準で建設された建物は、新耐震基準施行後に建てられた建物に比べて顕著に倒壊しやすいことが分かりました。具体的には、1981年以前に建てられた建物は倒壊の割合が高く、新耐震基準に基づく建物は相対的に被害が少ない結果となりました。新しい基準に基づいた建築物は、特に接合部の仕様が明確化された2000年以降の建物が倒壊などの危険性が低かったことが数字で示されています。
鉄筋コンクリート造及び鉄骨造建築物の被害状況
また、鉄筋コンクリート造の建物についても調査が行われました。杭基礎が施された建物では、転倒や傾斜が確認され、これに関する詳細な調査が必要とされています。旧耐震基準の建物では柱の破壊などが見られ、鉄骨造の建物でも複数棟の倒壊が報告されています。これを受け、耐震基準の見直しが求められるでしょう。
非構造部材の被害と耐震改修の効果
非構造部材に関しては、全面的な脱落は認められませんでしたが、一部の天井板や外壁の落下が確認されています。耐震改修を実施した建物では、倒壊や崩壊が見られなかったことから、改修の効果が証明されています。
市街地火災と地域復興への影響
輪島市河井町で発生した市街地火災の影響についても調査が行われ、住宅再建や地域復興に関するデータが整理されています。これらのデータは、今後の復興計画に生かされる重要な資料となると考えられます。
報告書の入手方法
今回の報告書は、国総研の公式ウェブサイトからダウンロード可能です。詳細なデータと分析結果が含まれており、建築物の安全性に対する理解を深めるために役立つことでしょう。
組織概要
国土交通省国土技術政策総合研究所は、茨城県つくば市に所在し、研究開発を通じて国土の安全性や技術向上を目指しています。代表者は福田敬大氏です。国民からの問い合わせも受け付けており、得られた知見を共有することで防災への貢献を目指しています。