ゑびや大食堂の改革物語とその未来への挑戦
伊勢にある「ゑびや大食堂」は、創業150年以上の老舗として、地元の人々に愛され続けてきた食堂である。しかし、今日の観光面での厳しい競争や経営体質における古さから、立ち行かなくなる危機を迎えている。今回は、経営を引き継いだ小田島春樹氏がどのように改革を進めたか、そして、それがもたらした未来の展望に焦点をあてる。
1. 変わらない経営がもたらした危機
ゑびやは創業当時から変わらない手切りの食券や、手書きの台帳を使用し続けた。そのため、時代の流れから取り残されてしまった感も否めない。観光客の減少に伴い、年々厳しくなる経営環境。しかし、当時の経営陣は、黒字経営が維持できていたため危機意識が薄く、変化を受け入れる体質が整っていなかった。
2. 経営改革への第一歩
小田島氏が経営を引き継いだのは2012年。彼は即座に、DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れた業務の効率化を図ることを決意した。不安を抱える従業員にも、改革のメリットを徹底的に伝え、社内の意識改革を進めることが重要であると認識した。
まず、職場環境を整備することで従業員のモチベーションを向上させ、その後新しいシステム導入のメリットを身近に感じてもらうよう心掛けた。これにより、徐々に職場環境が改善されていった。
3. 壁を乗り越えたDX化
新しい技術の導入に対しては、一般的に反発が起こることが多い。しかし、ゑびやでは、利用者側に負担がかからない仕組みを導入し、スムーズにDX化へと進むことができた。在庫管理の自動化、データ分析による顧客ニーズの把握などを進め、業務の効率化を実現した。
4. 成果の実感と目覚ましい成長
改革の結果として、店舗の生産性は飛躍的に向上。その結果、業績も大きく改善され、グループ全体の売上が約8倍に達成、さらに2024年度までには12倍を見込む。業務の効率化により、従業員の満足度も大幅にアップし、柔軟な働き方が実現できたことも大きな要因である。
5. 地域への貢献と未来への展望
小田島春樹氏は、今後も地方創生に貢献したいという思いを持ち、多数の講演活動を通じてその思いを広げている。また、未経験社員によるM&Aへの参画など新たな挑戦にも力を注いでいる。
終わりに
このように、ゑびや大食堂は経営の変革を通じて、利益向上だけでなく、未来の方向性を見出した。留まることなく変わり続けることが、老舗飲食店にとっての新たな道であると身をもって示した。今後のさらなる挑戦に注目したい。
代表プロフィール
*会社名:株式会社EBILAB / 有限会社ゑびや
*代表取締役:小田島春樹
1985年生まれ。大学でマーケティングと会計を学び、大手通信企業に入社。その後、「ゑびや」に入社し、現在の地位に至る。地域の課題解決や人材育成にも注力し、地方創生に貢献する活動を続けている。