国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、革新的なゼオライト合成法を開発しました。この手法では、ゼオライトの基本構造を予め組み上げ、その後の脱水縮合を通じて新たなゼオライト(UPZ-1)を合成しました。この発表は、10月3日(米国東部時間)に「Chemistry of Materials」に掲載されています。
この新しい合成手法の中心にあるのは、複合構造単位(Composite Building Unit: CBU)として知られるd6rを含むオルトケイ酸の籠型12量体(Q12H12)の水素結合により、あらかじめ配列させるというものです。これにより、脱水縮合を通じてゼオライトを構築することが可能となります。これにより、高性能な触媒や分子ふるいとして広く使われるゼオライトの開発に新たな可能性が開かれるとされています。
ゼオライトはその規則正しい細孔構造から、化学工業や環境浄化、ガス分離の現場で重要な役割を担っています。これまでは、塩基性の高温高圧の水熱条件下で合成されることが一般的でしたが、これはプロセスが複雑であり、結晶化の過程も不明瞭であるため、理想的な構造の設計に課題がありました。産総研の新たな手法により、その複雑さを解消するための第一歩が踏み出されたといえるでしょう。
研究チームは、これまでに69のオルトケイ酸に関連する基本単位を合成・単離する技術を確立しており、この技術の蓄積を基に新しい合成手法を考案しました。特に、HIF(Hydrogen-bonded Inorganic Framework)結晶を用いることで、その結晶性を保持したまま脱水縮合することに成功し、さらに高温での処理によって新たなゼオライトUPZ-1を生成することができました。
UPZ-1は、約80μmという大きな結晶であり、すでに観察されたQ12H12の配列がしっかりと保持されています。単結晶X線構造解析と透過型電子顕微鏡による詳細な解析によって、ゼオライトの主要な構造の維持が確認され、新たなシロキサン結合が形成されることが明らかになりました。
今後、産総研はさらに多様なHIF結晶の生成を行い、それらを基にさまざまなニーズに対応した高機能なゼオライトの合成を目指します。これにより、触媒技術のさらなる革新が期待されます。この研究成果は、科学界でのゼオライト技術に新風をもたらし、大きな影響を及ぼすことが予想されます。
この論文は「Chemistry of Materials」に掲載され、著者には俊貴西鳥羽氏、正安五十嵐氏、各種の専門家が名を連ねています。DOIリンクはhttps://doi.org/10.1021/acs.chemmater.4c01848です。