新技術「InSIGHT Grip」
2026-01-29 10:05:38

非破壊検査を革新する新技術「InSIGHT Grip」の誕生

非破壊検査を革新する新技術「InSIGHT Grip」の誕生



芝浦工業大学で開発された「InSIGHT Grip」は、非常に新しい試みである非破壊検査技術であり、ロボットハンドによる「把持」と「検査」を同時に行うことができる装置です。この技術の開発を牽引したのは、システム理工学部の桑原央明准教授率いる実世界情報メカトロニクス研究室です。

この技術の最大の特徴は、モーター情報だけを基に把持力や加振を制御するところにあります。従来の方法では高価な力覚センサーが不可欠でしたが、「InSIGHT Grip」ではその必要がありません。これにより、対象物を優しくつかみ、その内部状態—例えば果物の熟度や工業製品の劣化具合—をリアルタイムに推定できるのです。

非破壊検査のニーズと現状の課題



農産物の熟度判断や工業製品の劣化診断といった用途において、非破壊検査の重要性は年々高まっています。しかし、現在使用されている主な手法は、レーザーや音響を用いるため装置が大型化し、コストが高くなる傾向があります。このため、作業(例えば収穫や選別)と検査が別々の工程で行われることが多く、生産現場におけるコストや時間のロスを引き起こす要因となっています。

これらの課題を解決するために、桑原准教授の研究室では、最小限の構成で作業と検査を一体化させる手法を確立しました。

「InSIGHT Grip」の機能と原理



「InSIGHT Grip」は、コンパクトなロボットグリッパーで、最小2つのモーターで駆動します。この技術の革新は、従来の高価な力覚センサーに依存せず、モーターの回転数と電流値を用いて力を推定する独自の手法にあります。これにより、力覚センサーレスで対象物を優しくつかむことが可能になり、さらに微細な振動を与える加振制御も同時に行うことができます。

具体的には、物体をつかみながら特定の周波数で加振し、その応答を解析します。得られた振動応答からは、物体全体の運動や表面近くの運動を反映した共振ピークが抽出され、第1ピークと第2ピークの違いから内部の硬さを導き出します。この技術により、外見からは判断できないメロンのような物体の内部状態を迅速に把握できることが実証されています。

将来への展望



この技術は、愛知県の「第20回わかしゃち奨励賞 応用研究部門」で優秀賞を受賞しました。今後は、果実の熟度推定精度の向上を目指し、無人搬送車(AGV)やマニピュレータとの連携による実証実験が進められる予定です。さらに、この技術は農業分野にとどまらず、工業製品や医療、建設分野にも幅広く応用されることが期待されています。

最終的には、触覚情報を基に対象の状態を理解する能力を「触覚知」とし、これを産業界の共通基盤として確立し、人手不足の解消や食品ロスの削減、インフラの安全維持に貢献することで、次世代の触覚インフラを目指します。

芝浦工業大学について



芝浦工業大学は、システム理工学部やデザイン工学部といった多様な学部を有し、約1万人の学生と300人以上の専任教員が在籍しています。2024年には学科制から課程制へと移行し、さらなる教育の質の向上を図る予定です。創立100周年を迎える2027年には、アジアの工科系大学でトップ10を目指し、人材育成に力を入れています。

会社情報

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