企業の価値を高める「非財務資本」の重要性とその影響

企業価値を高めるための「非財務資本」: 調査結果の分析

近年、日本の上場企業において非財務資本の重要性が高まっています。これは、企業の持続的な成長や価値向上に不可欠な要素とされています。特に、個人投資家が企業を評価する際に注目するのが、「人的資本」と「社会・関係資本」です。この2つの資本が企業の魅力に与える影響について、企業広報戦略研究所が実施した調査結果を基に考察してみましょう。

非財務クロスバリューモデルとは

まず、調査で用いられた「非財務クロスバリューモデル」について説明します。これは、国際統合報告評議会(IIRC)が提唱するフレームワークを基にしたもので、財務資本を除いた5種類の非財務資本を用いて、企業の経営課題を分析し、価値を視覚化するためのツールです。このモデルを通じて、企業がどのように非財務情報を発信し、投資家がそれをどう評価するかを明らかにすることが目的でした。

調査結果の概要

企業調査と個人投資家調査を通じて、533社の企業と3,680人の個人投資家から得られたデータは、次のような重要な知見を示しています。

1. 非財務情報の発信: 現在および今後発信を強化したい非財務情報のいずれも、企業は「人的資本」と「社会・関係資本」を最も重視していると答えています。
2. 従業員のエンゲージメント: 企業が今後強化したい発信項目のトップは「従業員が働きやすい制度設計を通じたエンゲージメント向上」です。
3. 投資家の認識: 個人投資家もまた、「人的資本」と「社会・関係資本」の重要性を認識しており、両者が伝わることで企業に魅力を感じる割合が約2.8倍に達しています。
4. 透明性の高い経営: 個人投資家が重視する要素として、「透明性の高い経営」にも注目が集まっています。

なぜ「人的資本」と「社会・関係資本」が鍵となるのか

人的資本は、企業の生産性や競争力を高める基盤です。個人投資家がこの情報を受け取ることで、企業が提供する製品やサービスの質が向上するという認識を持つことが分かりました。また、社会・関係資本は、ビジネスの持続可能性を確保するために不可欠です。利害関係者との強固な関係を築くことで、企業の信頼性や社会的な評価が高まります。

それでは企業はどうすべきか

企業は、非財務資本の重要性を鑑みて、その発信方法を見直す必要があります。例えば、人的資本や社会・関係資本に関する具体的な成功事例や改善活動を、個人投資家や顧客に対して効果的にコミュニケーションすることが求められます。また、透明性のある経営を心掛け、業務内容や成果を定期的に開示することで信頼を深めていくことも重要です。

結論

企業の魅力を高めるためには、非財務資本に焦点を当てた戦略的なアプローチが重要です。この調査結果は、企業と個人投資家の関係構築、魅力的な企業スタンスの確立に向けた移行を促す一助となるでしょう。今後も引き続き、非財務情報の開示が求められる時代において、企業は自身の強みを伝えるための工夫を凝らす必要があります。