トラザメ卵の研究
2024-10-23 17:35:10

トラザメの卵の微生物環境を探る研究が発表されました

トラザメの卵の微生物環境を探る研究が発表



最近、アクアワールド茨城県大洗水族館をはじめとする研究チームが、トラザメの卵内における微生物環境についての研究結果を発表しました。この研究では、トラザメの卵が産卵後にどのような清潔な環境で形成されるかが解明され、これが胚の正常な発育にどれほど重要かが明らかになっています。

研究のポイント


  • - 無菌に近い環境の発見: トラザメの卵が産卵後約2ヶ月間、低い細菌密度を維持することが確認されました。これにより、清潔な環境が胚の正常な発育に不可欠であることが示唆されています。
  • - 未知の防御メカニズムの存在: 研究の結果は、病原性細菌からの防御メカニズムが存在する可能性を示し、医療や保全における新たな応用が期待されています。

研究の経緯


東京大学大気海洋研究所の髙木亙助教、兵藤晋教授および専修大学経済学部の髙部由季講師などから成る共同研究グループは、トラザメの卵殻内の微生物環境を詳細に分析しました。卵生の板鰓類は、産卵から孵化までに数ヶ月から1年を要しますが、その発育期間中の胚を病原性細菌から守る仕組みはこれまで不明でした。

卵はコラーゲンでできた頑丈な卵殻に包まれますが、初期胚は免疫機能が未発達であり、自然界の病原菌に対する抵抗力がないことが懸念されていました。研究チームはまず、発生中のトラザメの胚を用いた生存実験を行い、プレハッチ前の初期胚が感染に対して脆弱であることを確認しました。

クリアな内環境


次に、卵殻内の細菌数を調べ、その群集構造を分析したところ、産卵直後の卵殻内は海水に比べて極端に細菌数が少なく、すなわち清潔な環境であることが明らかになりました。産卵直後から約2ヶ月間、このクリーンな状態が保持されていたと確認されています。これが初期胚の正常な発育に大いに寄与しているというわけです。

さらに調査の結果、卵殻内ではスフィンゴモナス科の未同定種が80%以上を占めることが判明しました。この細菌群は母トラザメの卵殻腺にも見つかっており、宿主に有益な影響を与える可能性が考えられます。

新たな知見の意義


板鰓類の受精卵は卵殻に包まれ、卵殻内は卵ゼリーで満たされています。興味深いことに、鳥類の卵白に存在する抗菌タンパク質とは異なり、板鰓類の卵ゼリーにはほとんどタンパク質が含まれていません。このことから、板鰓類には特有の抗菌メカニズムが存在する可能性が示されています。

今後の研究では、トラザメの卵をモデルにして脊椎動物における新しい抗菌物質や感染防御メカニズムの解明が期待されます。この研究が進展することで、絶滅危惧種であるサメやエイの保全活動にも寄与することが望まれています。

研究者の背景


この研究は、東京大学と専修大学、アクアワールド茨城県大洗水族館の研究チームが共同で実施したもので、結果は「Environmental Microbiology Reports」に発表されました。研究は、JSPS科研費および公益財団法人IFO発酵研究所からの助成を受けています。

今後、この研究の進展に注目し、サメの生態系を守る活動がどのように進化していくのかを見守る必要があります。


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会社情報

会社名
公益財団法人いばらき文化振興財団
住所
茨城県水戸市千波町東久保697
電話番号
029-305-0161

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