MS診断支援の新たな道
2025-12-17 09:24:39

ウェアラブルデータで多発性硬化症の診断支援を目指す新研究

ウェアラブルデータで多発性硬化症の診断支援を目指す新研究



株式会社テックドクターと国立病院機構北海道医療センターが共同で進めた研究は、多発性硬化症(MS)の患者におけるウェアラブルデータと脳MRI指標の関連性を明らかにしました。この研究は、睡眠指標や心拍数、日常活動量などの生理データが、どのようにMS患者の疾患進行のモニタリングに役立つかを探求しています。この成果は、2025年11月22日号の国際神経免疫学誌『Journal of Neuroimmunology』に掲載され、注目を集めています。

研究の背景と目的


多発性硬化症は、中枢神経系を侵す慢性の自己免疫疾患です。急性発作とともに、神経機能が低下し、質の低下や認知にまで影響を及ぼします(Jakimovski et al., 2024)。特に、脳の萎縮は疾患進行の重要な指標であり、治療の効果を評価する上でも大切なデータとなっています。研究者たちは、脳萎縮が時に無症状でも進行することから、より早期に病状を把握する方法の必要性を強調しています。

研究方法


この研究では、北海道医療センターの神経内科の協力のもと、30名のMS患者(再発寛解型23名、二次進行型5名、一次進行型2名)が対象になりました。使用されたウェアラブルデバイスはGoogleのFitbit Inspire3で、最大30日間のデータが収集されました。

取得されたデータは、睡眠指標、心拍指標、日中の活動量を含む29項目からなり、MRIによる測定結果(脳容積やT2病変体積など)と相関を調査しました。研究には、日本語版のピッツバーグ睡眠質指数や疲労重症度尺度が使用され、データ解析には年齢と性別を調整した相関分析が用いられました。

重要な研究結果


研究から得られた主要な成果は以下のとおりです:
  • - 深い睡眠とMRIの相関:深い睡眠の時間が長いほど、T2病変体積が小さく、頸髄断面積が大きいことが示され、睡眠の質がMSの病変と関連している可能性が示唆されました。
  • - 心拍変動と脳容積の関係:睡眠中の心拍変動と脳容積の関連が明らかになり、自律神経機能の重要性が再認識されました。
  • - 日中の活動量が頸髄に与える影響:日中の心拍数や歩数、代謝当量などが頸髄の萎縮度と関連しており、日常の身体活動が病状と結びついていることが示されました。

社会的意義と今後の道筋


本研究の結果は、ウェアラブルデバイスが日常的に収集できる生理学的データが、MSの神経病理を反映する可能性を示しています。特に、身近なデータが病態の変動を反映することが確認されたため、医療現場での実用性が期待されています。研究者たちは今後、さらなる大規模な検証を経て、MSの早期発見や進行のモニタリング精度を向上させることを目指しています。ウェアラブルデータを基にした新しい医療モデルが実現することが望まれます。

結論


テックドクターと北海道医療センターの共同研究は、日常の生理データを活用することで、より効果的なMTの病態評価や治療方針の決定に寄与することが期待されます。引き続き、患者に優しい医療の実現を目指し、研究の進展が待たれます。


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会社情報

会社名
株式会社テックドクター
住所
東京都中央区京橋二丁目2番1号京橋エドグラン 4F
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