温度差を電力に変換する熱電変換技術が今、注目を集めています。この技術は、排熱を電気エネルギーとして再利用するために不可欠であり、地球環境への負担を軽減する手段として期待されています。特に、東京都立大学と株式会社東海理化が共同で開発を進めている「カーボンナノチューブを用いた熱電発電技術」は、その柔軟性、伸縮性、導電性という特性から、多様な環境での熱電変換を可能にします。
熱電変換は、温度差から電気を生成するプロセスです。従来の無機材料による変換性能の高さは知られていますが、様々な状況に対応するためには、柔軟で適応性のある材料が求められます。そこで登場するのが、カーボンナノチューブです。この材料は、グラフェンシートを巻きつけたナノサイズのチューブ構造を持ち、極めて軽量でありながら高強度を誇ります。また、温度による形状変化や電気的特性が顕著なため、熱電変換に向いています。
研究の成果として、東京都立大学の柳教授をはじめとする研究グループが、従来のナノチューブに化学的処理を施すことで、効率の良い熱電変換を実現しました。P型とN型のナノチューブを自在に形成することで、高い電気伝導率を持つカーボンナノチューブヤーンが完成し、これまでの課題を解決する道を開いたのです。特に、近年増加している排熱の回収は、社会全体のエネルギー効率を向上させる上で重要な要素です。
カーボンナノチューブを利用することで、排熱が比較的低温でも効果的に電気に変換されることが報告されています。具体的には、100度から200度の排熱であっても、高い効率で電力を生成できることが期待されています。この技術が実用化されれば、工場や冷却装置から排出される未利用の熱エネルギーを電気として活用することで、エネルギーの持続可能な利用に繋がります。
この成果は、9月4日から9月6日にかけて幕張メッセで開催される「第3回 ネプコン ジャパン[秋]」でも公開されます。この展示では、カーボンナノチューブを用いた熱電発電技術の詳細やその実用化に向けた展望について紹介される予定です。カーボンナノチューブの特性を最大限に活かした熱電変換技術の開発は、ただエネルギー問題の解決だけでなく、防災や環境保全などの様々な分野でも利用される可能性を秘めています。
今後も、この研究チームは持続可能な社会の実現に向け、更なる研究開発を進めていくとしています。カーボンナノチューブの新たな応用がどのように進展していくのか、引き続き注目が集まります。